今後の病院経営のポイントとして、「自院の経営ばかりを考えるのではなく、地域全体、社会全体を見通す目を養うべき。そうするためにもわれわれは『Always Say YES!』の精神で、『高い志』と『大きな夢』を持ち続けることが重要だ

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『今後の病院経営のポイントとして、「自院の経営ばかりを考えるのではなく、地域全体、社会全体を見通す目を養うべき。そうするためにもわれわれは『Always Say YES!』の精神で、『高い志』と『大きな夢』を持ち続けることが重要だ』 

医療政策の転換必至で『病院経営は今が攻め時』 今後は鴨川市のブランディングへの関与も

医療法人鉄蕉会 亀田総合病院 亀田信介院長 
(2008年11月15日「医療経営ステップアップフォーラム in 東京」(医療タイムス社、等主催) 



 亀田院長は「地域連携と病院経営」について、亀田メディカルセンターの地域医療連携への取り組みを紹介しながら、社会構造の変化にふさわしい病院経営のあり方について実務的な視点から紹介した。 

 亀田メディカルセンターは千葉県鴨川市(人口3万7000人)において、「亀田総合病院」(925床)を中核に、外来専門の「亀田クリニック」(19床)、回復期の亀田リハビリテーション病院(56床)、家庭医養成の「亀田ファミリークリニック館山」(無床)、コメディカル養成の「亀田医療技術専門学校」、さらに安房医師会病院から経営を引き継いだ社会福祉法人「太陽会」などから構成されている。グループの常勤医は総員で390人に及び、 
高度専門医療から在宅・家庭医療、さらに介護福祉まで網羅的なサービス提供体制を整えている。 
  

●連携強化に向け、カスタマーリレーション部創設 

 亀田メディカルセンターでは、1996年に地域の病医院との連携強化のため、病院長直轄の地域医療連携室を立ち上げた(専従3人)。亀田院長は、以前から連携のための地ならしを専任で行う部門の必要性を感じていたという。「連携室は、他の医療機関からの各種問い合わせに対する総合窓口としての機能だけでなく、医師やコメディカルの派遣、検査機器、院内施設の共同利用のコーディネート、各種勉強会の企画・運営などを担う部門として創設した」。05年には、従来の病―病、病―診連携からさらに踏み込み、患者を含めた連携システム実現と、マーケティング機能などを担う部門に組織拡大を図り、名称も「カスタマーリレーション部」に改めた(専従スタッフ・開設時12人→ 現在2 4 人)。「私たちは2003年より電子カルテをベースとした情報共有システムPLANETを導入し、地域の医療機関、患者様やご家族との情報共有を推進してきた。例えば入院中の患者様の情報を遠隔地のご家族がネットワーク上で閲覧することもできる」 

 この他にも南房総地域の医療サービスの拠点として、地域医療支援病院、がん拠点病院、地域中核生活支援センターなど複数の機能を担っている。地域医療連携のポイントについては「地域の病医院への情報提供などの支援も大切だが、やはり医師不足で困っているところに医師を派遣するなど、人的サポートを行うと関係性が深まる」と述べた。 
  

●母子救急の拠点として県全域をコーディネート 

 周産期医療連携に対する取り組みについて、「産婦人科医師21人を擁する総合周産期母子医療センターを核に、サーバに蓄積した患者の周産期医療データをWEB型ネットワークで多施設と共有できる環境を構築し、地域周産期医療センター、東京女子医科大学八千代医療センターなどと連携して、緊急時の母体搬送についてシステム化した受入態勢を構築した」と紹介した。また千葉県における周産期医療連携体制について「母体搬送が発生した場合、しかるべき周産期医療センターに速やかに誘導する母体搬送システムが構築されており、そのコーディネートを24時間365日体制で私たちが担っている。緊急母体搬送の受入先に手間取り、悲劇的な結果につながる事例が各地で頻発しているが、千葉県では今のところ報告はない」と語った。 

 また、一般救急についても「亀田総合病院救命救急センターの年間救急搬送受入患者は約3万5000人だが、これにグループの安房地域医療センターの救急搬送受入患者数(年間救急搬送受入患者数は約1万9000人)を合わせると、二次医療圏管内救急搬送の実に8割近く(08年度)を担うこととなる」と活動内容を紹介した。 
  

●病院経営は「いよいよ守りから攻めへ」 

 続いて医療界の展望に話題は移った。まず、医療崩壊の責任の所在について、亀田院長は「完全な政策ミス」としたうえで、「医師不足が問題になっているがこれも政策判断の誤り。高齢化社会が進めば、それに見合う医師数が必要になるのは明らか。先進諸国は、そのための準備を進めてきたが、日本は逆の施策を行ってきた」と見解を述べた。その上で、「ここまで医療崩壊が進めば、政府は考え方を改め、政策転換せざるを得ない。そうなると病院の経営環境はいよいよ回復しはじめる。従ってこれからの5年間が経営を攻めに転ずる絶好のタイミングとなるはず」との考えを述べ、手始めに、医師やコメディカルに比べ遅れていた事務職員の処遇の大幅な改善に着手することを明らかにした。 

 この他にも、懸案事項であった4年制看護大学の設立や、介護系学部増設に向けての動きを本格化させる計画を示した。 
  

●医療の枠を超え、市のブランディングにも 

 グループの今後の方向性について、まず鴨川市における亀田メディカルセンターの位置づけを、経済規模の側面から示し、続いて地域のブランディングへの積極関与の方向性を明らかにした。経済規模では、亀田メディカルセンターの年間経常費用(06年度313億7900万円)は、鴨川市の年間予算(同279億4400万円)を上回り、年間人件費(06年度123億2000万円)についても、鴨川市の年間一般会計予算(同141億円200万円)に近い。また、安房地区の07年度の高齢化率は、全国平均21.5%に対し30.7%と大幅に上回り、後期高齢化率でも全国平均9.5%に対して、15.2%となっている。さらに、鴨川市の65歳以上の高齢者率は30%を超える。 

 亀田院長は「地域において私たちの病院は最大の経済セクター。そういう意味では市の基盤を担う存在として『まちづくり』にも積極的に関わる責任があると感じている」と述べた。また、地域と医療機関の関係性について「かつては病院が町に存在しなくても、町は機能していたが、高齢化が進展し、人口減少時代に突入すると、病院が存在しなければ、町も存在し得なくなる」とした上で「地域社会において医療というのは、料理の美味さを引き出す『出汁(だし)』である」とし、医療・介護・福祉をインテグレートした病院が社会システムを支える存在であることを強調。今後の病院経営のポイントとして、「自院の経営ばかりを考えるのではなく、地域全体、社会全体を見通す目を養うべき。そうするためにもわれわれは『Always Say YES!』の精神で、『高い志』と『大きな夢』を持ち続けることが重要だ」とまとめた。