自治体の病院経営の手段としては、やはり独法の運営手法が最も優れている・・・しかし 今年の4 月1 日に独法になった山形県・酒田市病院機構の理事長と事務局長のお話を聞いてから・・・・



『自治体の病院経営の手段としては、やはり独法の運営手法が最も優れている・・・しかし 
今年の4 月1 日に独法になった山形県・酒田市病院機構の理事長と事務局長のお話を聞いてから・・・・ 
そのとき気づかされたのは、独法化と一言で言ってもその目的もやり方も私どもと全く違うということでした。 
独法という制度そのものは全国一律ですが、移行目的、移行手段、移行後の運営は千差万別です。百の病院があれば百通りあるといって過言ではありません。 
さまざまな理由で独法移行を決断するし、独法後の病院の運営の仕方も当然に異なってきます』 



独法推進友の会ニュースW2.doc(那覇市立病院HPより) 

Web版 第2号 平成20年10 月1 日 

シリーズ独法雑感 その2 

自治体病院の経営手法はどれがいいのか?独法か全適か自治体病院の経営手法はどれがいいのか、当事者にとってはホットな問題と言っていいでしょう。私なりに考えたことをまとめてみました。 

現在、自治体病院の経営手法としては、地方公営企業法の一部適用(通称「一部適用」)、同法の全部適用(通称「全適」)、地方独立行政法人(通「法」)指定管理者、PFI があると思います。 

民間移譲は病院経営の全面放棄ですから、自治体経営の手法には該当するでしょうけれども、病院経営の面からは論外ですので、ここでは検討対象外とします。 
病院で働く職員の視点から消去法でいきますと、その 

次に不適当なのは指定管理者でしょう。法律的には指定管理者が病院を運営することになったとしても、そこで働いていた職員を公務員のまま従来の勤務条件で継続雇用することは可能でしょうが、実際的にはほとんど全て雇用が打ち切られて、新たな勤務条件(実態として勤務条件の切り下げ)で再雇用されています。 

全員再雇用の保証もありません。当然に職員からは猛烈な反対運動が起きますが、自治体にとって都合がいいのは、自治体立の名称が残ることと地方交付税や補助金の財源措置の対象となることです。そういう面では自治体による救急医療や僻地・離島医療の確保の一手段になります。 

しかし病院側から見ますと、自治体による病院の経営の放棄にほかなりません。 


その次に不適当と思われるのは、PFI でしょう。私どもの病院改革においては建物の更新がありませんでしたのでPFI は真剣に検討はしておりませんが、高知県の事例でいいような報告は聞こえてきませんし、またある大学の先生は、PFI は仕様が細かすぎて日本の風土に合わないと批判されておりますので、ここでは却下ということにしておきます。 

一部適用か全適かということになりますと、これはもう法律上の制度の上からも、全国自治体病院協議会でもお墨付きを与えておりますので、全適がよろしい、ということになるでしょう。そういうことで最終的に全適か、独法かということになります。 


以前の私でしたら、独法が絶対いいですよと言っていたのですが、最近、言い方を変えたといいますか、そういう結論的なことは言わないことにしています。 

そのきっかけとなったのは、私どもと同じ今年の4 月1 日に独法になった山形県・酒田市病院機構の理事長と事務局長のお話を聞いてからです。両自治体のトップの決断とその後の院長・事務局長の的確で迅速な対応に感銘を受けました。 

そのとき気づかされたのは、独法化と一言で言ってもその目的もやり方も私どもと全く違うということでした。 
独法という制度そのものは全国一律ですが、移行目的、移行手段、移行後の運営は千差万別です。百の病院があれば百通りあるといって過言ではありません。 
さまざまな理由で独法移行を決断するし、独法後の病院の運営の仕方も当然に異なってきます。当然に、独法がそうであれば全適もそのとおりでしょう。 

全国の公立病院をみれば、一部適用・全適で黒字を出している病院もたくさんあります。そういうことであれば闇雲に独法を勧めるのもいかがなものか、と考えるようになりました。 

私どもの病院が独法に移行する決定的理由は、前にも申し述べたように7 対1 看護基準導入のためです。もし私どもの置かれている経営環境が、次の2つの条件を満たしていたらどうだったでしょうか。 

条件の1は、首長及び議会が病院経営に理解があり、総務省の定数削減圧力をものともせず病院が要求するとおりの定数条例の改正を認める環境です。 

条件の2 は、例えば寿退職その他の理由により看護師 
の平均年齢が30 代前半という地域の生活環境です。この2つの条件を満たすなら、7対1 看護基準を導入し、なおかつ将来の経営見通しも立てられますから、私たちは独法に移行することはなかったかもしれません。 

7 対1 看護基準導入のために、定数条例の制約からの解放と公務員とは異なる独自給料表の成立を同時に可能にする手法として独法を選んだにすぎません。勿論、本院の急性期病院としての将来はDPC と7 対 
1 看護基準導入にあると認識し、本市・本院のおかれている状況を総合的に判断した上での決断です。 

人は十人十色というように病院もまた然りです。それぞれの病院にはそれぞれの歴史、伝統、風土があり、また地域の政治状況も多種多様です。このような各病院の置かれている状況を無視した機能だけの判断が全てではない、と考えるようになりました。 

独法移行にはさまざまなリスクを伴います。病院職員説得の見通し、住民・議会の意向を読み誤ると、独法移行に失敗するばかりでなく病院経営にとって深い傷を負うことになりかねません。それぞれの病院の置かれている状況の中でなにがベストなのか、これはまさに最高レベルの経営判断というべきでしょう。 

このように思いをめぐらした結果、機能比較だけの判断で、ただ使い勝手がいいというだけの理由で独法移行を推薦するのは軽率と思うようになりました。 
そういうことで最近では、「独法は確かに使い勝手のいい経営ツールである。しかし、それぞれの自治体・病院で何がしたいのか、何をしようとしているのか、それを自ら認識することが最も大事である。独法はそれを実現するためのツールに過ぎない。 

それぞれの自治体・病院には、それぞれの地域における役割、地域文化、地域の政治状況、職員風土、歴史がある。これらの状況を踏まえ、自ら求めるものに最も適合した手段を選択することが大事であると考える。」と言うようにしています。 
もっとも、客観的な見解としてこのように述べますが、一介の事務屋としては、前回も述べましたように、自治体の病院経営の手段としては、やはり独法の運営手法が最も優れていると思っているし、客観的にもそうだろうと思いますので、各病院の置かれている状況を冷静に判断し、機が熟したら、あるいは機が熟しているなら(この判断が肝心です。 

積極的に独法移行を推進したいなら、首長・病院職員・議会・住民に働きかけてその機運を醸成させて後機が熟したら、ということになりますか)間髪をいれずに(山形・酒田のように)移行するほうが望ましいとお勧めすることに変わりはありません。 


編集後記 
9 月の残暑の残るある日、本院の幹部職員は、法政大学大学院准教授高田朝子先生と慶應義塾大学教授横田絵理先生の訪問インタビューを受けました。本院の事例を論文や慶応ビジネススクールのケースとしたいとして、調査に来られたのです。なんでも1930 年代ごろハーバード大学で誕生したケースメソッド方式の討論型教授法の素材として格好のケースのようです。ケース出版の予定のようですが、どのような教材になるか、完成が楽しみです。 
本院は、独法に移行したものの看護師不足から7:1看護基準が取得できずにおりましたが、看護師の追加募集、派遣ナースの利用や職員への休暇取得延期要請などの対策の甲斐もあって、このたび10 月1 日から7対1入院基本料がとれるようになりました。いわば7対1を取るために独法になったようなものですから、本当にヤッター! 
という感じです。同時に入院時医学管理加算と地域連携診療計画管理料(脳卒中患者の地域連携加算)も正式に受理されました。 
実は10 月の上旬、病院機能評価の訪問審査があります。只今その対策の総仕上げ・ 
の猛特訓中です。頭が痛いです。 
投稿、ご意見、ご質問お待ちしています。メールでお寄せください。 
メールアドレスはhapdt@nch.naha.okinawa.jp です。 
文責:T・G