医師不足具体的な対応策・・・吉田豊元弘前大学長 の説得力あるお話


 医師不足具体的な対応策・・・吉田豊元弘前大学長の説得力あるお話 

 「開業医の医師会と勤務医との間で構築する医療体制をつくってやらないとだめ。そこの偏在が少しでも緩和されるとそれだけでも効果があると思う。たとえば統廃合が必要。また、小児科、産科だとかは特に医師が不足している。 
地域の自治体病院の中に、周産期の部屋と人、助産師をきちんと用意し、そこを開業医も出入りして勤務医と一緒に利用する協働体制が考えられる。開業医と勤務医が一緒になって解決すべきである・・・  

「老健や老人ホームなど、医師が必要なところが、どんどん増えてきた。研究者は大学の研究室に残って研究する。青森には大学以外の研究施設がない。 
ほかには先端医学研究施設があって、どんどん医師が入っている。遺伝子の研究だとか。そんなところに医師がとられてしまう。弘前にもそんな施設があれば医師はどんどん残るのだが…。ないですから若い人が、研究したい人がそっちへいってしまう。結論は、政府がもっと金出さないと、これら、どの問題も解決しないということです。医療費をもう少し増やして、施設の充実、組織の確立、そういうことに金を使って、どんどん思い切ったことをしないと、病院に魅力は出てこない。つぶれる病院に、誰が勤務したい人がいますか」』 


2008年2月14日(木)  東奥日報   

公立病院改革指針が県内に波紋  

病院立て直しの特効薬か、リストラ推進の手段か-。総務省が昨年末に示した「公立病院改革ガイドライン」。公立病院に経営改善を求める指針が、県内自治体病院に衝撃を与え、波紋を広げている。ガイドラインは、機能再編や経営改善を進める病院に、財政的な救済策を差し伸べる。一方で、ベッドの空きが目立つ病院に規模縮小を求める。病院の今後の在り方を大きく左右するいわば「アメ」と「ムチ」だ。 
 県内二十七自治体病院で百四十五人の医師が不足しているとされる中で各病院からは「地域実情が考慮されていない」「効率化が前面に立った中央の論理」と、ガイドラインそのものへの批判が立ち上る。国が各病院に求める「改革プラン」策定は義務ではない-とされるが、県南地区の病院事務局長は「実質的に強制と受け止めている」。 

 一方で、約八割の自治体病院が赤字に陥る中、その硬直した体質を根本から変える“大手術”のきっかけになる-との声もある。 

 ガイドラインには、詳細部分が掲載されておらず、各担当者は情報収集に懸命だ。西北五、津軽地域などの病院事務局は、勉強会を開き、不透明な道筋を必死に照らそうと模索している。 

 自治体財政健全化法で、破たん一歩手前の「早期健全化団体」に陥る恐れがある自治体は県内に複数ある。財政悪化の一因となっている病院事業を一時的にでも改善させるため、病院不良債務を解消する特例債の適用を視野に入れ、試算する。「メリットよりもデメリットが大きい」と分析する病院もある。 

 他県では、財政支援を受けるため、経営改革プランを既に準備している自治体もある。 

 市町村本体の命運をもにぎる自治体病院は、地域医療の維持と、経営効率化の二つの命題のはざまで苦悩しながら今後、厳しい決断を迫られている。 


 2008年1月10日(木) 東奥日報   

 証言 医師不足/吉田豊元弘大学長 下/定員増効果は15年後/開業医との協働体制を  

-医学部(科)の入学定員削減は、どんなやり方だったのか。 

 「全国の学長会議や学部長会議で堂々と国は、医師が余ると説明していた。 

 病院長会議でも国が説明するということで、減らす方針を了解した。反対の声はあまり出なかったね。官僚を信頼していたのではないか。あのころは一方的だったから。減らすということを国で決めて、『あんたところはなんぼ、あんたところはなんぼ』っという具合。本当はもっと減らす予定だったんですよ。 

 われわれ(弘大)は定員百人は確保すると頑張ったんですよ。本当は八十人にしたかったんですよ、国は。一気には八十人にはできないから、百人にしてそれから八十人にしようという方針が国にあって、百人になったときは、これ以上は減らしたくないと学長会議や学部長会議でもよく話し合っていた。当時から地方では医師がそんなに潤沢なわけではなかった。減らすことには賛成していなかった。官僚がいい数値を出して持ってきて、『減らして』と言ったわけでしょ。かかわっていた大学の委員がいたはず」 

 -削減の結果に対する思いは。 

 「時期だけの問題かもしれない。あと百年とは言わなくても、あと五十年たったときには果たして医師の数が適切かどうか分からない。日本の人口が相当減りますから。一時的とは言わないが、三十年単位の話でないですか」  

 -国が出した数値に納得できたのか。 

 「当時は学生を減らすということが、命令的だった。どこで決まったかは、わからんけどね。閣議だったかな。それに反対するだけの資料を持ってなかった。理論武装もなかった。国立大学全体がそうだったと思いますよ。その当時はもう医師はこれ以上増やす必要性はないと思っていた」  

 -医師の需要が高まっている現状をどう思うか。 

 「老健や老人ホームなど、医師が必要なところが、どんどん増えてきた。研究者は大学の研究室に残って研究する。青森には大学以外の研究施設がない。 

 ほかには先端医学研究施設があって、どんどん医師が入っている。遺伝子の研究だとか。そんなところに医師がとられてしまう。弘前にもそんな施設があれば医師はどんどん残るのだが…。ないですから若い人が、研究したい人がそっちへいってしまう。結論は、政府がもっと金出さないと、これら、どの問題も解決しないということです。医療費をもう少し増やして、施設の充実、組織の確立、そういうことに金を使って、どんどん思い切ったことをしないと、病院に魅力は出てこない。つぶれる病院に、誰が勤務したい人がいますか」  

 -二〇〇八年度にはまた弘大医学科の入学定員が増えるが。 

 「医師はもう少し多い方がいい。ある程度、いくらかは解消になる。ただ、近年中に解決しようと、医学部定員を増やしても全然役に立たない。医学生を増やしても、効果は十五年後にならないと出ない。十五年は待てないじゃないですか。今ある医師でやることが大事」  

 -それでは具体的な対応策はあるのか。 

 「開業医の医師会と勤務医との間で構築する医療体制をつくってやらないとだめ。そこの偏在が少しでも緩和されるとそれだけでも効果があると思う。たとえば統廃合が必要。また、小児科、産科だとかは特に医師が不足している。 

 地域の自治体病院の中に、周産期の部屋と人、助産師をきちんと用意し、そこを開業医も出入りして勤務医と一緒に利用する協働体制が考えられる。開業医と勤務医が一緒になって解決しないと」  

-臨床研修義務化をどうみているか。 

 「大学を中心に充実させていく必要がある。研修医があふれているところもある。大都市の有名病院では。臨床研修制度そのものの問題ではない。県の医療体制に魅力が欠けているんでしょうね。大学も研修病院もそこを充実していかないといけない。都市志向があって、なかなかそれだけではできないが。若者の都市志向が大きく影響している。それでも待遇、研修面でも、学問的な面でも魅力的な施設があれば学生は残ると思いますよ」  

 -最後に医師不足の背景をどうみるか。 

 「若者の都市志向と、都会に若い医師に魅力のある病院、研究機関が集中的にできてきた。がんセンターだとか、聖路加(病院)を含めて、研修から研究から非常に魅力的なものを備え、それに都会志向がかけ算になって出てきている。それをこっちの魅力でひっぱるというのは、そう簡単でない。相当魅力ある、地方にならないと。向こうも医者がだぶついてくれば分からないけど」