賀茂地区一市五町(下田市、東伊豆、河津、南伊豆、松崎、西伊豆町)唯一の公的医療施設「共立湊病院」=南伊豆町湊=が、新病院建築問題で揺れている。

    
  


静岡新聞
賀茂地区一市五町(下田市、東伊豆、河津、南伊豆、松崎、西伊豆町)唯一の公的医療施設「共立湊病院」=南伊豆町湊=が、新病院建築問題で揺れている。二月には同病院を運営し、下田市などへの移転新設を主張する社団法人「地域医療振興協会」の撤退騒動も発生した。関係者は早急に議論を進め、全地域の住民や観光客の安全・安心確保に向けた新病院の設置を目指すべきだ。 

 同病院は大正十二年に現在地に建設された「湊海軍病院」がルーツ。戦後は主に結核療養所として歩んだ。昭和四十年代に一般病床を抱える「国立湊病院」になったが、国の再編計画に伴い平成九年、地元市町でつくる一部事務組合が経営移譲を受けた。 

 ただ、施設は昭和四十年代当時のまま。耐震化どころかプライバシーのない通路配置や狭小な病室など、地域の中核施設としては見劣りする状況に陥っている。五年前から新病院の建設検討委員会が開かれているが、会合はわずか八回のみ。決定事項も「現施設の耐震化はしない」「利便性の高い場所に新病院を建設する」の二点だけという“お粗末”ぶりだ。 

 議論が進展しない理由は地元の南伊豆町議会や同町選出の組合議員による反発だ。町議会ではこれまで計四回、町の医療過疎防止などを理由に反対決議を採択。病院の移転が一時は市町村合併の争点になったことや、各市町で構成する共立組織のために同町以外の関係者が意見の衝突を避けていたこともあるだろう。 

 しかし、同病院が地区全体の共有財産であるなら、事情が許す限り全域の住民が利用しやすい中心部付近に新設することは最も自然な結論と言えるのではないか。 

 同病院は現在、患者の約八割が同町と下田市に集中している。救急は下田地区消防組合の約五割を担うが、距離が遠い東伊豆、西伊豆の両消防からは全患者の2-4%しか搬送されていない。療養型病院なら現在地は適地かもしれないが、地域全域の一般患者や二次救急を扱うには無理があることが利用者の偏在にも表れている。 

 むしろ病院の移転新築を機に、自治医大の卒業生を中心に約六百三十人の医師を抱えて全国展開する同振興協会に医療体制の充実を求める方が建設的だろう。総合医の増員をはじめ、心筋梗塞(こうそく)に対応する循環器内科や診療所で手薄な泌尿器科の増設など、移転の逆条件を取り付けるくらいの交渉があってもいい。跡地での医療確保も全体でみればプラスになる。 

 仮に新病院が移転で決定しても、用地取得から完工までに早くて四、五年はかかる。資金面の問題もある。平成二十七年度末の病院耐震義務化まで、残された時間はそう多くないはずだ。 

 (下田支局・松岡雷太)