高知医療センター汚職:瀬戸山被告「便宜図っていない」--地裁で初公判 /高知



高知医療センター汚職:瀬戸山被告「便宜図っていない」--地裁で初公判 /高知 
2008.06.12毎日新聞   
 ◇家具など300万円、わいろ性否定 
 「私は無実です」。高知医療センターの民間委託(PFI)事業を巡る贈収賄事件で収賄の罪に問われた前院長の瀬戸山元一被告(63)。高知地裁で11日に開かれた初公判に紺色のスーツ姿で現れ、事前に用意した書面を見ながら「代金は請求された通り支払った。便宜を図ったことは全くない」と起訴事実を全面的に否認。検察側の主張と真っ向から対立した。【近藤諭、千脇康平】 

 検察側は冒頭陳述で、県と高知市で作る「高知県・高知市病院組合」と、病院の整備や運営を担う特定目的会社(SPC)「高知医療ピーエフアイ」の関係について「設計変更による増額分はSPCが負担することが両者の共通認識となっていた」とした上で、「瀬戸山被告が変更を決定する職務権限を有しており、SPC側の増額費用負担を抑制する設計変更を受諾すること自体が便宜供与」と指摘した。 

 これに対し、弁護側は「瀬戸山被告は設計変更協議で技術的側面から意見を述べるのみで、ほとんど関与できていなかった」と権限を持たなかったとし、「増額分をSPCが負担することは逮捕されるまで知らず、瀬戸山被告も病院組合に所属する以上、工事費を縮減し、病院組合の負担の軽減を図るのは当然」と主張した。 

 また、「約300万円分の家具や家電を受け取りながら10万円しか支払っていない」とする検察側の指摘に対し、弁護側は「請求されるつど代金を払い、総額は100万円近くになる」と贈与の事実とわいろ性を否定した。 

 瀬戸山被告は検察側の陳述の間、意欲的にメモをとり、2時間半に及んだ公判にも疲れた様子は見せなかった。退廷後は何も語らず足早にタクシーに乗り込んだ。 

 この事件を巡っては、瀬戸山被告に物品を贈ったオリックス・リアルエステート(現・オリックス不動産)の元社員2人の執行猶予付き有罪が確定。次回公判は20日午前10時から元社員の証人尋問が行われる。 

(以下逮捕時の報道記事) 

『高知医療センター事件の深淵 PFI汚職』(4)「うちの社員ではない」 
2007.10.07 高知新聞   
  
「誰に言えば話が進むんですか。責任者は誰なんですか」 
 贈賄容疑で逮捕された松田卓穂容疑者(68)=元オリックス不動産社員=ら高知医療ピーエフアイ側のスタッフから、いつのころからか、そんな言葉がもれ始めた。いらついたような、腹に据えかねたような言葉として、当時の県・高知市病院組合の複数の職員が記憶にとどめている。 

 ある職員はこんなふうに振り返る。 

 「院長予定者の瀬戸山(元一容疑者)さんは病院建設の現場にいろんな指示を出すけど、当時の病院組合はその調整をうまくやれていなかった。何かあっても、知らん顔する幹部がいた」 

 病院トップに就く瀬戸山容疑者が注文を出すこと自体は「不当要求」でも何でもない。むしろ理想的な病院づくりのためには、当たり前の仕事といえた。 

 しかし松田容疑者は逮捕前、「工事の最後の半年は右往左往してどうにもならない状態」と振り返り、瀬戸山容疑者を「独裁者」とまで表現して非難した。 

 「瀬戸山は、ことあるごとに『(高知に来たのは)橋本知事が頭を下げたから』『(文句があるなら)知事に聞いてみろ』と。そりゃあ、すごかった」「瀬戸山の要求をすべて聞き入れれば工期が遅れる。そうするとマスコミから『オリックス』の看板をたたかれる。(瀬戸山容疑者からの物品供与の要求を)聞かないとしょうがないという感情が起きても…」 

 松田容疑者の話が本当なのかどうか。ただ、病院建設の指揮系統が相当混乱していたことは、当時の職員の話で分かる。 

 「瀬戸山さんも『この病院建設の責任者は誰やねん』と言ってました」 

  ■あいまいな権限 

 県警が強制捜査に着手した九月十六日。県市病院企業団の現幹部は前院長の「権限」について記者会見で問われ、やや困惑しながら答えている。 

 「最終権限は(病院組合トップの)管理者。理事(院長予定者)の専決事項は『新病院の整備に関することで、理事において決裁すべきと判断される事項』。明文化された権限は、ないわけではないですけれど、最終的には意向を反映できる方として迎えたという…」「権限を委ねたというのではない。権限ではない。権限は先ほど読み上げた(専決事項)」 

 あいまいな権限と責任の中、「官民協働」の旗がよれていた。「日本初の病院PFI」は初動からつまずいていた。 

 贈賄側の二容疑者について、ピーエフアイ社は「オリックス・リアルエステート(現オリックス不動産)から派遣された要員。当社の社員ではない」とし、「(瀬戸山容疑者に渡した)家具家電の資金がピーエフアイ社から出た事実は判明していない」と説明。 

 ピーエフアイ社代表企業のオリックス、二容疑者の出身母体のオリックス不動産も「関係ない」「関与はないと思っている」と、現時点では組織的な関与を否定している。 

 一般的な汚職事件の場合、「個人としての収賄側」と企業など「組織としての贈賄側」が存在する。今回は、どこがその「組織」なのか。 

 深淵(しんえん)にもぐる事件の実相。取材を進めるうち、PFI事業ならではの複雑な構図が次第に明らかになってきた。