兵庫県丹波市「県立柏原(かいばら)病院に医師を派遣してきた神戸大学大学院の松尾雅文教授(小児科)は,「守る会の活動は革命的だ」と、評する。

 

 

日比公会堂 ステージ 背景のパワポ


『兵庫県丹波市「県立柏原(かいばら)病院に医師を派遣してきた神戸大学大学院の松尾雅文教授(小児科)は,「守る会の活動は革命的だ」と、評する。』 


小児科を守れ:/下 医師が来てくれた 市を動かし人件費工面 
2008.06.08毎日新聞  
 ■いつ病院へ行けば 

 兵庫県丹波市の「県立柏原(かいばら)病院の小児科を守る会」のスローガンは三つ。(1)コンビニ受診を控えよう(2)かかりつけ医を持とう(3)お医者さんに感謝の気持ちを伝えよう――。 

 「でも、どのタイミングで病院に行けばいいんだろう」との疑問も生まれた。早速、母親向けの冊子を手作りすることにした。 

 子育て雑誌などの参考資料を集め、柏原病院の医師のアドバイスを受けながら取り組んだ。完成は2月。A4判カラー12ページで、タイトルは「病院に行く、その前に……」。 

 熱が出た▽せきが出る▽吐いた▽下痢――などの症状別にYES・NOのチャートをたどると、様子を見る▽かかりつけ医を受診する▽大至急受診する――といった回答にたどりつく。6000部のうち5000部を丹波市が買い取り、保育園や幼稚園、乳幼児のいる家庭に配布した。 

 ■夜・休日の患者半減 

 守る会の呼びかけは、目に見える成果をもたらした。 

 柏原病院小児科に夜間・休日に訪れる患者は、04年度で月平均145人、05年度も129人に上っていた。「医師2人ではもたない」と判断した和久祥三(わくしょうぞう)医師(41)は06年度、広域での輪番体制を始め、当番病院を増やした。その結果、月平均の患者数は減少したが、それでもまだ78人に上っていた。 

 それが「守る会」が「コンビニ受診を控えよう」と呼びかけた07年度は34人にまで減った。「守る会の成果だと思う」。和久医師は言い切る。 

 同病院に医師を派遣してきた神戸大学大学院の松尾雅文教授(小児科)は「守る会の活動は革命的だ」と評する。「『コンビニ受診』という言葉は以前から言われてきたが、医師側からは発信しにくかった。丹波市は今、日本で最も小児科医が働きやすい地域だ」 

 神戸大の小児科医の間で「応援に行きたい」との機運が生まれた。一方、丹波市も小児科医の人件費を負担する緊急事業(1500万円)をスタート。この結果、10月から、毎週土曜日の夜間当直と、専門外来の医師3人(月1回ずつ)の派遣が決まった。県立病院の人件費を市が負担するという、全国で極めてまれなケース。市の担当者も「守る会が市を動かした」と言う。 

 ■互いを思いやる 

 春。朗報が伝わった。ネットで活動を知った岡山県の小児科医が「ここで働きたい」と手を挙げたのだ。神戸大学からの常勤医も1人増員が決まった。小児科医は4人に回復した。ぜんそくの次男を抱え、当初からのメンバーの杉浦保子さん(29)は診察室前で曜日別の勤務表を見上げた。「真っ白だった勤務表に医師の名が埋まっていくのがうれしくて」 

 3月。守る会代表の丹生裕子(たんじょうゆうこ)さん(37)は、千葉県東金市の公民館の壇上にいた。地域医療再生を考える市民シンポジウムに招かれたのだ。「私たちは活動を通じて、医療とは『施し』を受けるものではなく、医師と患者が互いに思いやることだと分かりました」 

 会場の約200人から大きな拍手が起こった。(この連載は村元展也が担当しました) 



(参考) 
2008年05月08日 (木) 
NHKスタジオパーク「地域医療を守る住民パワー」 
<前説> 
医師がいなくなって、小児科や産科を閉鎖する病院が相次ぐ中、地域の医療を守ろうと立ち上がった兵庫県丹波地域の母親たちの活動が注目されています。飯野解説委員です。 

Q1このお母さんさんたちの活動が注目されているのはなぜですか? 

A1 各地で医師不足が深刻化していますが、医療を受ける住民の側のちょっとした気づきと行動が、医療崩壊を食い止める大きな力になることを示しているからです。きょうはそのお母さんたちの活動をご紹介します。 



  

人口10万人あまりの兵庫県丹波地域にある県立柏原(かいばら)病院の「小児科を守る会」の活動です。会に参加しているのは、この病院を受診する子育て中のお母さん15人です。フリーマーケットに出品して活動資金を作り、地域の医療を守ろうと活動を続けています。守る会ができたのは去年4月。きっかけは、柏原(かいばら)病院での医師不足でした。5年前には40人以上いた医師が、大学病院からの医師の引き上げなどで、去年は25人まで減り、小児科の医師も診療に携われるのは一人だけとなりました。ところが、その医師もこれ以上の負担に耐えられないと、辞職を考えていることがわかったのです。病院に小児科がなくなると、子供の健康を守れないという危機感から、お母さんたちの活動が始まりました。 

Q2 具体的にどんな活動をしているんですか? 

A2 当初は、医師の増員を求める署名活動が中心でしたが、今はこの3つのスローガンを掲げて、様々な取り組みを展開しています。そのスローガン 





▲ひとつは「コンビニ受診を控えよう」です。コンビニを利用するように夜間病院を気軽に受診するのを控えようということです。 
▲ふたつ目は「かかりつけ医をもとう」です。病院に行く前に、病状について相談できる開業医をもとうということです。 
▲3つ目は「お医者さんに感謝の気持ちを伝えよう」です。夜間救急外来が混 
んでいると、いつまで待たせるのかと怒り始める患者もいますが、そうではなく、先生大変なのにありがとうという気持ちを伝えようということです。 
なぜこうしたスローガンを掲げたかというと、小児科の医師から話をきく中で、夜間、軽症の患者が救急外来に殺到していることが医師を疲れさせ、その医師が、月に10回以上も当直をしながら日中も子供たちを見てくれていることを知ったからです。子供たちを守るには、お医者さんも大切にして守らなければならないと、気づいたというわけです。母親たちは、このスローガンをかいたビラなどを配って地域住民への呼びかけを始めました。 

Q3 住民の側に変化はあったのでしょうか。 

A3 時間外に柏原病院を受診する子供の数が減ってきています。 
Pこれは、会の活動が始まった去年とその前の年の、時間外に受診する患者の数を比べたものです。ごらんのように半数以下に減っています。しかも、時間外に受診する子供で入院する割合が増えていて、病院では、重傷患者の治療に力を注げるようになったとしています。 

Q4 守る会の呼びかけの成果ですね。 

A4 そう思います。ただし、お母さんたちは、コンビニ受診を控えるよう呼びかけただけではありません。地域のお母さんたち向けにこうした冊子も作りました。子供の応急処置の方法など、様々な情報が盛り込まれていますが、注目したいのは、子供の症状別に、年齢や機嫌のよしあしなどをたどっていくと、病院にすぐ行く必要があるのか判断できるチャートです。 



  

その一部を抜粋したのがこちらです。たとえば、38度以上の熱が出て、赤ちゃんが生後3ヶ月までなら、発熱以外いつもと変わらない場合は、小児科に電話相談して24時間以内に受診すればいい。機嫌が悪い、いつもと様子が違う場合は、電話相談してできるだけ早く小児科を受診するなどとなっています。 

Q5 お母さんたちにとってはありがたい情報ですね。 

A5 この冊子は、病院の小児科医や市の保健師の協力で作られ、乳児検診などの場でお母さんたちに配られています。親も子供の状態をしっかり見極めて、軽症の時に夜間の受診を控えれば、本当に必要な場合に病院で適切な治療が受けられる。そうした環境をつくれるよう、患者も賢くなりましょうということだと思います。 
VTR そしてもうひとつ、病院の廊下に張られたこのメッセージを見てください。小児科を受診するお母さんたちが、医師への感謝の思いをつづっています。こうした思いやりと感謝の気持ちが、折れそうになっていた医師の心を元気にして、退職を考えていた医師はこの病院にとどまることになりました。そして、この4月からは、こうした心暖かい地域で働きたいと、別の地域から小児科の医師二人がきて、この病院で、働くようになりました。 

Q6 地域の医療を守りたいというお母さんたちの思いが届いたんですね。 

A6 そうです。この地域では、守る会の活動に刺激を受けた地域の開業医や歯科医師などが、小児科だけでなく、地域全般の医療を立て直そうと動き始めていますし、別の地域でも、守る会と同じような活動を始めるお母さんたちの動きが出ています。 
最近私のもとには、苦情ばかりいう患者が増えて、仕事をするのがいやになるという医師からの手紙が届きます。そうした医師と患者の相互不信が、医師の病院離れにつながっていると、常々感じていたので、丹波地域のような取り組みが輝いて見えます。医療崩壊を食い止めるには、医療を提供する側と医療を受ける住民が互いを思いやり、地域医療を守るために力を合わせていくことが、大切だということではないでしょうか。こうした取り組みが全国に広がってくれればと思います。 

投稿者:飯野 奈津子