近江八幡市立総合医療センター:PFI あり方検討委員会報告が、公開されますので計画進行中の公立病院関係者はご覧ください。


『近江八幡市立総合医療センター:PFI あり方検討委員会報告が、公開されますので計画進行中の公立病院関係者はご覧ください。』 

報道記事1 

(時時刻刻)風前、病院PFI 民間活用し効率化のはずが大赤字 
2008.01.22 朝日新聞   
  
民間の資金と知恵を社会資本の整備に役立てようと始まったPFIが、病院事業で苦境に立っている。滋賀県近江八幡市では21日、全国初めて設計から運営までPFI方式で実施した病院経営をめぐって、「契約解除」案が浮上。病院では初事業だった高知市でも、契約解除の言葉が飛び交う。導入から8年余り。国も事業の透明性が必要だとし、改善に乗り出す。(日比野容子、中川壮、浜田陽太郎) 


第一号で契約解除案 

 「PFIという外国の呪文を前に、近江商人のそろばんを忘れた」 

 経営悪化が明らかになった近江八幡市立総合医療センターについて検討委員会(長隆委員長)は21日、契約解除も視野に入れた厳しい「提言」を冨士谷英正市長に答申。PFIを導入した市の姿勢を批判した。 

 同センターは、PFI方式により06年10月開設。大手ゼネコン大林組が出資した特別目的会社(SPC)が病院設計・建設を担当、所有する。 

 開院後は医療以外の給食や清掃などの業務を一括して受注。30年間の長期契約で、市側は計56億円のコスト削減が可能と試算。前市長時代の03年に契約された。 

 問題は足元の収支と資金繰りの悪化だ。医業収入の減少などで、実質的な初年度である07年度には、想定より10億円多い24億円の赤字を計上。今年度末には、つなぎ資金8億円の一時借り入れを余儀なくされる。建て替え前の旧市民病院は30年間、黒字経営だった。 

 提言は、事業計画そのものの精査が甘かったと指摘する。その象徴が、豪華な建物。ロビーは吹き抜けで広々としており、床はカーペット敷き。壁は高級ホテルのような木目調。ベッド1床あたりの単価は約3千万円で、民間病院の2~3倍という。 

 また市によると、SPCに今年度支払う運営費は約16億5千万円。旧市民病院時代に委託業者に支払った運営費は計約6億7千万円だった。「高すぎるのではないか」と冨士谷市長は話す。 

 こうした見方に対し、SPCの社長は昨年12月、検討委のヒアリングで「建物の概要や維持管理・運営の内容、レベルはすべて官が決めること。それに対して我々(複数の民間企業)が提案し、官が選考する」「今になって(契約額が)高いというのはおかしな話」と反論。医療業務は市が運営していることを挙げ、「収入減はSPC業務とは関係ない」とした。 

 病院経営とPFIの関係について、検討委員の伊関友伸・城西大准教授は、2年ごとの診療報酬改定などに影響されやすい病院経営の特性を踏まえて、「10年以上の長期契約を結ぶことは疑問」と分析している。 


高知でも不満噴出 

 近江八幡より1年半早くPFI方式で開業した高知医療センターについても、不満の声が高まっている。 

 同センターの06年度の赤字は22億円に迫り、経営計画より4億円以上多い。18日に開かれた高知県・高知市病院企業団議会議員協議会は、「契約解除も視野に入れる必要がある」と、県や市の議員から厳しい批判が相次いだ。 

 批判の矛先は、オリックスが構成団体のSPC。調達を担う材料費の医業収益に占める割合が、提案で示した数字を大きく上回っているためだ。「オリックスが契約をとるために、低めの数字を設定したならおかしな話だ」という声や、業務提案書の提出を求める声も上がった。県と市の議会も昨年12月、経営改善を求める決議を全会一致で可決した。 


事業の透明化、国が勧告 

 PFI事業は、バブル崩壊後の景気対策として橋本政権下で始まった。議員立法で推進法案が成立し、99年秋に施行。さらに「官から民へ」をスローガンにした小泉政権で導入件数が急増。内閣府によると、スポーツ施設や刑務所など、計画中を含めて約290件の事業が動いており、うち160余の事業でサービスの提供が始まっている。 

 導入が進む背景には、国や自治体の財政難がある。PFI方式をとれば、公共サービスをより安く効率的に実現するというのが、売りだった。 

 病院事業で開業ずみは3件。うち2件で契約見直しの動きが起きたことは、病院PFIの課題を浮き彫りにしている。 

 一つは、公立病院の経営そのものの厳しさだ。医師不足や診療報酬の引き下げで、約千の自治体病院の収支は急速に悪化。総務省は昨年12月、公立病院の改革ガイドライン(指針)をつくり、各病院の「黒字達成」を求めた。 

 国は自治体に対し、新たな財政健全化策を求めており、病院の赤字を自治体本体の赤字と連結した決算を対象にした「査定」を来年度から始める。自治体にとって、財政指標の改善は、今すぐ達成する必要がある。 

 一方、PFI導入による財政的なメリットは30年など長期にわたる契約期間の終了後に判明する。そんな長期のメリットより、赤字団体への転落を免れるには、「目の前の赤字改善の方が先」という懐事情が、自治体の姿勢を左右する。 

 二つめの課題は、自治体など事業の発注元と、受託する特別目的会社SPCとの関係だ。 

 清掃や給食など外部委託が可能な業務をSPCが一括受注すれば、それまでの個別契約に比べてコストが削減でき、経営効率化できる、というのが病院PFIの理念だ。 

 だが、近江八幡市では「業者との個別契約の方が、要望を直接伝えられて効率的」との声が上がった。高知でも、自ら提案した仕事の水準を満たせないSPCへの不満が出ている。公共事業アドバイザーの熊谷弘志さんは、「PFIでは、自治体が通常の起債で調達するより高い金利の民間資金を使う。その差額を上回るメリットがないと、税金の無駄遣いになる」と話す。 

 総務省行政評価局が今月11日に発表した政策評価では、調査した146事業のうち、コスト削減の根拠を公表していたのはわずか1件。「事業の客観性・透明性が必要」と勧告した。内閣府は今夏にも、導入の際の手本にと、契約書のひな型や解説を示す予定だ。 


 ■全国の病院PFI事業 (病院名は仮称含む。内閣府調べ) 

高知医療センター(高知市)    05年3月開設
近江八幡市立総合医療センター(滋賀県) 06年10月開設
八尾市立病院(大阪府) 04年5月開設
島根県立こころの医療センター(出雲市) 08年2月開設予定
多摩広域基幹病院・小児総合医療センター(東京都)  計画・建設中
がん・感染症医療センター(東京都) 計画・建設中
愛媛県立中央病院(松山市)  計画・建設中
神戸市立中央市民病院  計画・建設中
大阪府精神医療センター(枚方市) 計画・建設中
精神医療センター(東京都) 計画・建設中
筑波大付属病院(茨城県つくば市)  計画・建設中


◆キーワード 

 <PFI> プライベート・ファイナンス・イニシアチブの略。公共施設の建設、維持管理、運営などを民間の資金や経営ノウハウを活用して行う、英国で生まれた手法。事業コストなどが削減され、質の高い公共サービスを提供できるとされる。近江八幡市立総合医療センターの場合、特別目的会社(SPC)が金融機関から融資を受けて施設を建設。市は施設を借りる。SPCは市から支払われる使用料や運営費の中から金融機関に返済する。 


1・近江八幡市立総合医療センター:PFI契約解除も視野に--「あり方検討委」 /滋賀 
2008.01.22 毎日新聞  
 ◇「抜本的な見直し」市長に答申 

 近江八幡市立総合医療センターの改善策を検討する市長の諮問機関「あり方検討委員会」が21日、同センターで開かれ、民間資本を活用するPFI方式の契約解除も視野に入れて「抜本的な見直しをすべきだ」と冨士谷英正市長に答申した。市長は「厳しい答申だが、早急に提言の具現化に努めたい」と表明した。全国初のPFI病院として昨年10月に開院したが、解除されれば、これも全国初となる。 

 昨年度決算が3億円の赤字となり、今年度末に24億円に悪化することから、市長が総務省公立病院改革懇談会座長の長隆氏ら6人の外部委員と、正木仙治郎副市長ら内部委員2人の8氏に委嘱し、昨年12月発足。2回の協議で提言をまとめた。 

 提言によると、13年度末に債務が70億円に膨らみ、財政健全化法の財政再生団体に転落すると指摘。市側が十分な経営計画と検証を怠り、外部コンサルタントに頼り、安易な認識で事業を進めたと批判した。 

 改善策として、PFI期間(30年)の施設整備費など244億円のうち、99億円の金利負担の適正化▽年間4億円以上の支出削減――などを提案。また、同2億円の施設修繕費の前払い費用の適正化を特別目的会社(SPC)と交渉し、SPCが拒絶した場合は契約を解消すべきだとしている。さらに、国の「公立病院改革ガイドライン」が今年度中に改革プランを作るよう定めており、市にも計画策定を求めている。【斎藤和夫】