『財政破綻してから今日まで極めて情熱的に取材を継続した酒井真理子 読売新聞記者の記録です・・・明日は我が身の自治体関係者必読の好著です』(長 隆)



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今週のお薦め(週刊東洋経済2008年5月17日) 

限界自治 夕張検証 

読売新聞北海道支社夕張支局 編著 

第二の夕張市を出さないための有益な検証作業 

評者 中里 透 上智大学経済学部准教授 

 夕張市の財政破綻をきっかけに制定が急がれていた地方財政健全化法が4月に施行され、全国各地の自治体で財政の健全化に向けた取り組みが進められている。これを機に「夕張で何が起こったのか」を検証しておくことは、「第二の夕張」を出さないために有益な作業であろう。本書は、この検証作業を行ううえで重要な手がかりを与えてくれる。 

 夕張市はなぜ破綻したのか。本書を読むと、さまざまな原因が浮かび上がってくる。市役所を「夕張株式会社」と呼び、ワンマン経営を続けた中田鉄治市長(当時)。拡大路線に走る市長の暴走を止めることができなかった議会。赤字隠しのための会計操作を黙認してきた監査委員。衣食住を石炭会社にすがり、炭鉱がなくなってからは、行政にすがって生きてきた炭鉱街の風土。 

 バブルのころに過大な投資を行い、バブルがはじけてからもリストラをせず、粉飾決算によって損失処理の先送りをした挙げ句に巨額の負債をかかえて破綻したという経緯は、日本が不良債権問題に悩まされていた時期の構図と酷似している。 

 「第二の夕張」を出さないために大切なこととして本書に繰り返し登場するキーワードは「情報公開」だ。「市の財政状況、第3セクターの経営実態をもっと早く市民に公開していれば、チェック機能が働き、財政破綻は防げた」と後藤健二前市長は述懐している。地方財政健全化法のねらいのひとつはこの点にあり、各自治体の財政健全度の目安となる四つの指標が今秋から公表される。 

 本書は「夕張問題」をさまざまな角度から検証した貴重な記録であるとともに、財政破綻から今日に至る夕張の姿を市民と同じ目線で追いかけた、一人の記者の奮闘記でもある。 

梧桐書院/1680円/319ページ