病院PFI 英国では失敗・・・京都大学長瀬準教授の 近江八幡医療センター委員会でのご発言




『病院PFI 英国では失敗・・・京都大学長瀬準教授の 近江八幡医療センター委員会でのご発言』 


 長瀬委員:今回のPFIの事業については、国内ではモデル事業ということで注目をされているところでありますけども、実は病院でのPFI事業というのはイギリスでかなり先進的な事例がありまして、1990年代の後半で幾つかの病院について検討がされてきたというところです。2005年のブリティッシュ・メディカル・ジャーナル、これは英国医師会が発行している、学術的な記事も出ているような雑誌です。 

2005年時点では、PFIの状況について論説が出ております。 

タイトルが「PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)は死んか?」、 

副題に「PFIは英国で失敗したが、しかしその輸出は止まらない」というものがついております。 

その要旨でありますけども、英国のPFIというのは、当初保健省が新たな病院を建設する際には、PFI以外の方法での資金調達を認めないという方針が示されたために、PFIによって大規模な病院の再開発ブームになった。 

これについては懸念が示されておりまして、その懸念としては、1つ、改築の対象となるような施設の容量というのが、新しく提案される新施設においてより容量が小さいものしか出てこない。つまり、病院の規模が縮小するような提案がほとんどである。 

2つ目は、契約金額が著しく高額であるか、あるいは営業上の秘密によりその詳細が隠されているために、 
外部から見た場合に契約金額が高いように見える。さらに、その金額が、経済的な議論を経た上でも、妥当性が支持されることがない。つまり合理的ではないというような懸念が示されています。 


それで、実際に近年の開発事例を見てみますと、医療でのPFIの実験的な活用は事実上終わったというのが、2005年の英国の状況であるということです。 

その当初の事例としては、大学附属病院に相当するような新規病院の開発について中止された。その際の理由というのは幾つもあるそうですけども、その理由いうのは医療に適用するには、PFIという契約の枠組みが余りに複雑であった。 

もう一つは、PFIのNHS――イギリスの医療と 
いうのはすべて国営でして、その国営の医療を運営している機関をNHSと呼んでいるのですけども、そこに対するコスト負担の規模というのが実際どれくらいであるのか。また、その受注した会社がどれくらい、ある意味で儲けているのかということが徐々に関心を集めてまいりました。 

例えば英国議会のある委員会は、PFI事業で建設が行われた私企業は大きな利益を上げているという事実が明らかになり、関心を持つように至ったというのが、2つ目のPFI事業にブレーキをかけるきっかけになったという解説がされております。 

その論説では、英国における急激な医療の変化に対して、PFI事業が柔軟性に欠けているということが大きな問題であり、もう一つは、英国政府の予算政策とか、そういうものに対して事業が追従できないというところが問題であるという問題点を指摘しています。 

これらで挙げられてきた問題点は、実はこの委員会で挙げられてきた問題点と全く同一であります。英国人一流の皮肉な言い方ですけども、その論説の最後では、「英国でのPFIは死んでも海外では生き続けるだろう」「英国ではPFIの失敗もその成功同様に輸出し続けることに、少なくともその部分で輸出をするということでは成功するだろう」というような皮肉な言い方で、その論説を終えています。 

これの著者は、インペリアルカレッジという有名な大学のビジネススクールのディレクターであるリファット・アトシン氏と、それから公衆衛生学の教授であるマーチンマッキー氏という方が書いているものです。概要だけご紹介させていただきまして、日本語の簡単な訳も慌ててつくったのですが、タイプミスなどがありまして、原文を見ていただくのが一番いいと思うんです。 

今回、最終的に近江八幡のPFIを見てみますと、やはり事業に要している費用、つまりSPC側に支払っている金額というものは、事業計画の中でそれがどうやって決まってきたのかというところは全く置いたとしても、高額であるという現状というのも一致しますし、急激な医療の変化に対して柔軟性に欠けているという点に関しても、先ほどのアンケートを見ますと、個別の案件に対するいろんなご不満が出ているという点で同様かと思われます。 

また、実際のコスト、その妥当性がどうなのかということについて、なかなか見えてこないという点についても同様であろうかと思いまして、2005年の段階で既にこのような問題が知られていたにもかかわらず、現状に至っているのは非常に残念だなというふうに感じました。