財政赤字と闘う・・・北海道



『小樽市民病院問題 』         
  
    
[命あしたへ]財政赤字と闘う(3)統合計画、見込み甘く中断(連載)=北海道 
2008.04.25読売新聞   
 ◇第4部 

 昨年秋、道庁の会議室で道と小樽市の協議が行われた。議題は、市立病院の移転新築のための用地購入費約8億円の起債についてだ。 

 道市町村課の担当者は「病院の統合は進めるべきだが、将来の経営健全化が担保できていない。この状態では起債の許可は難しい。今は病院の経営改善に取り組むべきです」と述べた。道の厳しい態度に、小樽市の担当者は言葉を失った。 

           

 同市は、300床以上の大規模な市立病院を二つ抱える。総合病院の小樽病院と、精神神経科、脳神経外科など専門医療を行う小樽第二病院だ。この規模の自治体病院を二つ持つ市町村は、道内で小樽だけだ。 

 だが、3キロ以上離れた両病院は、それぞれが事務部門を抱え、医療機器も重複する。経営効率が悪いうえ、他の病院との競合も激しかった。両病院の不良債務は合わせて約44億円にまで膨らんだ。 

 赤字解消に向け、市は2003年に両病院の統合・移転新築を軸とする基本構想を策定した。病床を468床にほぼ半減し、市内の埋め立て地への移転を目指す。11年の開院に向け、07年度中に用地買収を行う予定だった。ところが、道が肝心の起債の許可を見送ったため、計画は中断せざるを得なくなったのだ。 

 起債の条件となったのは、両病院の約44億円の不良債務を5年間で解消することだ。その初年度となる07年度の赤字解消目標は、病院負担分で3億8700万円。だが、実際に解消できる見通しとなったのは3300万円程度にすぎなかった。 

 小樽病院の吉川勝久事務局長は「患者数が当初の見込みより少なかった」と嘆く。 

  

 さらに、昨年12月に総務省が「公立病院改革ガイドライン(指針)」を策定したことで、計画の先行きはさらに不透明になった。 

 同省は地方自治体に対し、08年度中に公立病院の経営効率化の改革プランを作るよう求めた。市は今後、プロジェクトチームを作り、12月までにプランをまとめる方針だ。だが、その議論次第では病院規模から建設用地まで、計画が大幅に変更される可能性もある。 

 山田勝麿・同市長は、「病院の統合・新築はあきらめていない。財政再建のためにも、早期再開を目指す」と強調した。 

 市の06年度の連結赤字額は58億6000万円。このうち7割以上を占める病院事業の赤字を解消しない限り、市財政の再建はあり得ないからだ。 

 だが、市民からは現在の移転計画に否定的な意見もある。 

 市内で内科医院を開業する高村一郎さん(55)は、「計画されている新病院は病床数も診療科目も多すぎる。規模を縮小し、民間移譲も検討すべきだ」と現在の計画に異議を唱える。 

 二つの病院が並立する状況が長引くほど、赤字も膨らんでいく。迷走する病院統合計画の出口は、まだ見えていない。 


 〈起債〉 

 自治体が施設建設などの事業費を調達するため、債券を発行すること。複数の会計年度にまたがるものを地方債と呼ぶ。市町村が財政能力を超える借金をしないよう、地方債を発行する時は都道府県と協議をする必要がある。 


 ◇題字は読売書法会理事・阿部和加子さん