産科医が不在の地域にとって、モバイル健診ネットワークは妊産婦の負担とリスク(危険)を軽減し、不安を解消する効果的な手段



『産科医が不在の地域にとって、モバイル健診ネットワークは妊産婦の負担とリスク(危険)を軽減し、不安を解消する効果的な手段』 

ルポ/注目集める遠隔妊婦健診/岩手県遠野市の助産院ネットワーク 
2008.04.17 公明新聞  
  
産科医不在のため、妊婦が遠距離通院での健診を強いられていた岩手県遠野市では、妊婦の健診を病院の医師とデータでやりとりできる助産院を昨年12月に市内に開設。 

4月からは常勤の助産師を2人体制に拡充し、妊婦の緊急搬送時には救急車に同乗する体制を敷いた。医師不足に対応するシステムとして注目を集める「遠野型助産院ネットワーク」を紹介する。 

 『背景』 

 『産科医不在。遠方の病院での健診、出産が大きな負担に』 

 「お兄ちゃん、ここが赤ちゃんの足だよ。わかるかな」。 
助産院で定期健診を受けるお母さん・菊池亜沙子さんの隣で心配そうに健診の様子を見守っていた大和くん(小学1年生)は、助産師の昆野幸恵さんが指さした超音波検査装置の画面をのぞき込むと、「ウン」とうなずいた。 

 岩手県の内陸部に位置する遠野市の人口は約3万2000人。河童や座敷童子で有名な柳田國男の「遠野物語」の舞台となっている自然豊かな地域だ。 

 遠野市では、毎年200人から230人が出産をするが、2002年に岩手県立遠野病院から産科医がいなくなってから、約6年にわたって出産できる病院がない状態が続いている。 

 このため、妊産婦は健診のために盛岡市、花巻市、釜石市など遠隔地の病院に通い、出産することを余儀なくされている。 
これらの都市は遠野市から車で70分から90分かかり、比較的近い釜石市の病院でも峠を越えて40分近くかかる。出産だけでなく14回程度ある定期健診のために遠隔地の病院に足を運ぶことは、妊産婦にとって「時間的にも経済的にも負担になるうえ、緊急時のことを考えると妊産婦に不安を与えている」(菊池幸枝・保健課主任兼助産師)状況だった。 

 こうした妊産婦の不安解消と負担軽減のため、市は06年から岩手県立釜石病院(釜石市)との間でモバイル遠隔健診を開始。07年12月には、「遠野健康福祉の里」内にそのための拠点となる公設の「助産院」を開設した。 

 その後、助産院の機能強化が図られ、現在は、2人の助産師が常勤している。さらに、嘱託医療機関である盛岡赤十字病院(盛岡市)をはじめ、岩手医科大学附属病院(盛岡市)、県立大船渡病院(大船渡市)など9つの医療機関とモバイル遠隔診断の情報交換が可能となっている。 


 『遠隔システム』 

 『健診データを医師に送信。テレビ電話で自由に会話も』 

 モバイル健診には、モバイル胎児心拍転送装置が使われている。 

 助産院内や妊婦の家で検出された胎児の診断データは、通信ネットワーク網に乗って医師に送信され、医師は常時、データを受け取ることができる。 

また、医師の携帯電話でも確認することができ、緊急の際には医師は外出先からでもデータを見て診断できる。さらに、電子カルテのデータも送ることができ、医師は健診データと電子カルテで胎児の健康状態をチェックする。 

 また、助産院にはインターネット回線を利用したテレビ会議システムも整備され、病院にいる産婦人科医と助産院の助産師、患者との間で自由に会話ができることで、「妊婦の不安が解消されている」(菊池助産師)。 

 助産院では、出産が迫った妊婦の状況を事前に消防署などに伝え、妊婦の緊急搬送時には助産師が救急車に同乗することにしている。 

 こうしたネットワーク体制に、妊娠35週に入った菊池亜沙子さんは、「冬場は雪が積もった山道を1時間以上かけて越えなくてはならなかった。市内で健診を受けられて楽になった」と喜びを語っていた。 

 このほか、助産院として、妊産婦、思春期、更年期の健康相談業務、乳房管理などの健診・相談などを行っている。 

 『公明の取り組み』 

 『渡辺氏が参院予算委で紹介。福田首相が普及推進を約束』 

 遠野市のように産科医が不在の地域にとって、モバイル健診ネットワークは妊産婦の負担とリスク(危険)を軽減し、不安を解消する効果的な手段として大きな注目を集めている。 

 公明党の渡辺孝男参院議員は、1月31日の参院予算委員会で遠野市のモバイル健診を「すばらしシステム」と紹介、さらなる普及を促した。これに対し、舛添要一厚労相は「IT(通信技術)を活用した医療情報連携システムの成果をまとめて具体的なものにしたい」と答弁、福田康夫首相も「今後一層の普及推進に努めていく」と決意を述べた。 

 こうした公明党の取り組みに、本田敏秋・遠野市長は、「医師不足の地域にとってこのシステムは必要不可欠なもの。今後の普及へ国会で取り上げてもらった意義は大きい。市としてもさらに推進していきたい」と感謝の声を寄せている。 

公明新聞社