国は自助努力で立て直せないところはつぶれてもいいとの考えだが、われわれは座して死を待つつもりはない。『七対一』ができる体制、医師を逃がさない体制、やりがいのある職場環境づくり―。独法化はその結果出てきた答えだった



『国は自助努力で立て直せないところはつぶれてもいいとの考えだが、われわれは座して死を待つつもりはない。『七対一』ができる体制、医師を逃がさない体制、やりがいのある職場環境づくり―。独法化はその結果出てきた答えだった』 

地域連携密に医療充実期す/那覇市立病院きょう独立行政法人化/不採算部門も維持/與儀理事長インタビュー 
2008.04.01沖縄タイムス   
  
設立から28年となる那覇市立病院が1日、地方独立行政法人へ移行した。公立病院として地域医療の中核的役割を担ってきた市立病院が今、なぜ独立行政法人なのか―。那覇市立病院の與儀實津夫理事長に病院改革の意義と地域医療の展望について聞いた。 


 ―改革を考えたきっかけは。 

 「医療費の削減を目指す国の医療制度改革により、市立病院が急性期病院として力を入れてきたことが存続できなくなる恐れが出てきた。十年前の赤字経営以来、職員の意識改革などを進め、数年前からは黒字を確保。年間約六万人の救急患者を受け入れ、小児科を二十四時間三百六十五日体制で対応するなど、やっと市民から信頼される病院になってきた矢先のことだった」 

 ―現在の医療体制の課題は。 

 「国が看護師の割合を『十対一』から『七対一』にすれば診療報酬を上げるという政策を打ち出した。当院の場合、六十人くらい看護師を増やせば診療報酬が上がり、赤字の割合も抑えられる。ところが一方で、総務省が国と地方公務員の定員数を削減するという方針を出し、那覇市も4・6%の削減目標を掲げた。公立病院としての定数制限と医療制度改革との間で身動きが取れない状況となり、市立病院崩壊の危機感を抱いていた」 

 「国は自助努力で立て直せないところはつぶれてもいいとの考えだが、われわれは座して死を待つつもりはない。『七対一』ができる体制、医師を逃がさない体制、やりがいのある職場環境づくり―。独法化はその結果出てきた答えだった」 

 ―独法化への移行が短期間に行われた。 

 「独法化は十年以上の改革が支えとなっている。決断が拙速だとの批判もあったが、医療制度改革を前に、悠長なことは言っていられない。現場にいる医療者としてはほかに任せてはおけない重大な局面だった」 

 ―採算重視で患者の切り捨てが行われるのではと懸念する声もある。 

 「改革は今ある医療サービスを維持するためのツールであり、営利目的ではない。赤字部門や救急などの不採算医療も市立病院の役目として維持していく。地域の診療機関との連携は役割分担の意味で必要不可欠。当院が中心となり地域全体の医療ネットワークを充実させていきたい」 

 ―医療スタッフの確保はどの病院でも課題だ。 

 「看護師は『七対一』の導入で正規雇用が増やせるので確保できるとみている。医師は優秀な医師を引きつけるための評価制度や給与システムの導入を考えたい。がん拠点病院として専門医を育てた実績もあり、『忙しくても勉強になる』と、研修からそのまま残る医師が増え始めた。やりがいの持てる働きやすい環境を整えていきたい」 

 ―国の医療制度の方向性をどう見るか。 

 「医療費の抑制は国としては仕方のない方針かもしれないが、現場としてはやり過ぎだと感じている。もっと費用を掛けて現場にゆとりある医療をさせてほしい。今の状況では医療者が立ち去り、医療制度が崩壊する。国はこの責任をどう受け止めるのか、全国の医療組織を通して訴えていくつもりだ」