『地方独立行政法人山形県・酒田市病院機構が2008年4月1日、スタートを機に公表した。中期目標は改革プランのよきモデル』









『地方独立行政法人山形県・酒田市病院機構が2008年4月1日、スタートを機に公表した。中期目標は改革プランのよきモデル』 





「地方独立行政法人山形県・酒田市病院機構 中期目標(素案)」 



前 文 

山形県立日本海病院と酒田市立酒田病院は、北庄内地域における二次医療機関として、高度医療や専門医療を提供し、地域住民の健康を支える医療機関としての役割を果たしてきた。 



また、山形県立日本海病院においては、2.5 次救急医療や災害医療、感染症医療などの政策医療についても、庄内地域の中核機関としての役割を担ってきた。 



一方、急速な少子高齢化の進行や新しい臨床研修制度等地方におけるによる医師不足の深刻化、医療制度改革等による影響などにより、自治体病院を取り巻く環境はますます厳しさを増してきている。 



国においては、「経済財政改革の基本方針2007」を踏まえ、総務省が平成19 年内に公立病院改革のガイドラインを示し、都道府県に対し、二次医療圏単位での自治体病院の再編・ネットワーク化に向け、有識者を含めた検討・協議を行い、平成20 年度までに再編等に係る計画を策定し、実施していくよう促している。 



こうした中、山形県と酒田市は、地域における医療資源の集約化・高度化を図るとともに、将来の患者需要予測とこれに伴い必要とされる施設整備の規模などについて検討を重ねた結果、 



平成20 年4 月からは、山形県立日本海病院と酒田市立酒田病院を統合再編し、日本海総合病院及び日本海総合病院酒田医療センター(以下「酒田医療センター」という。)とするとともに、山形県と酒田市が共同で設立する地方独立行政法人山形県・酒田市病院 

機構(以下「県・市病院機構」という。)が両病院を運営することとした。 



医療の安全性や信頼性、説明責任を重視する意識が高まりをみせる中、県・市病院機構は、急性期医療の集約により、これまで以上に地域住民の信頼に応えていくことはもちろんのこと、法令の遵守はもとより、高い倫理観をもって、安全かつ適正な病院運営を徹底 

しなければならない。 



病院を取り巻く環境が厳しさを増す中、県・市病院機構が政策医療を含む高度専門医療の提供などの役割を継続的に果たしていくためには、経営基盤の安定化を図っていくことが必要である。 



県・市病院機構は、一般地方独立行政法人としてこうした様々な課題に対し、自主性を発揮して積極的に取り組み、それらを地域住民が実感できるよう、最大限の努力を期待する。 





第1 中期目標の期間 



平成20年4月1日から平成24年3月31日までの4年間とする。 



第2 住民に提供するサービスその他の業務の質の向上に関する事項 



1 医療機能の統合再編及び施設整備 



県・市病院機構は運営する2病院について、山形県・酒田市病院統合再編整備基本構想(平成19 年3月、以下「基本構想」という。)に基づき、医療機能の統合再編と酒田市立酒田病院の老朽化等に伴う施設整備を行うこととしている。 



(1)統合再編後の医療機能 



統合再編の効果を最大限に発揮し、より安心、信頼、高度な地域医療を提供するため、医師等医療従事者の集約と病院機能の分担を進めることとし、平成23年度の施設整備完了時において、日本海総合病院及び酒田医療センターは、次の表に掲げる基本的な機能を担うとともに、地域の医療水準の向上にも寄与するため、必要な診療機能を確保すること。 



特に、三次救急については、庄内地域及び最上地域の一部をカバーする救命救急センター(新型)を整備すること。 



基 本 的 な 機 能 



日本海総合病院 



三次救急医療(救命救急センター(新型))、災害医療、感染症医療心疾患等、緊急性の高い急性期医療 

がん、糖尿病などに対する専門医療これらの医療水準の向上のための教育研修 



日本海総合病院酒田医療センター 

回復期リハビリテーション在宅医療、訪問看護等、急性期医療から介護・福祉への橋渡しとしての役割 

これらの医療水準の向上のための教育研修 



(2)施設整備 



基本構想に基づき、老朽化した酒田市立酒田病院の代替施設の整備を図り医療機能の統合再編を実現するため、県・市病院機構が所要の施設整備を行うこととしている。 



施設整備に当たっては、医療機能の統合再編によって担うべき診療機能及び患者ニーズに対応した施設内容とすること、日本海総合病院については、特に、増築・改修となることから、病院機能の全体最適化が図られることに留意して整備すること。 



併せて、現酒田病院の東棟の改築・改修も実施されるが、日本海総合病院も含めて、将来の医療需要にも対応できる柔軟な施設構成に配慮するとともに、県・市病院機構の運営により建設費の償還が可能となるよう、建設及び維持管理コストについても留意すること。 



なお、日本海総合病院の施設整備については、住民に混乱なく安定的に医療を提供するため早期の施設整備が必要であり、平成22年度までの完成を期すこととし、酒田医療センターの改築・改修についてもできる限り早期の施設整備を行うこと。 





(3)施設整備完了時までの診療計画 



県・市病院機構においては、日本海総合病院の増築・改修が終了までの期間(平成20 年度から22 年度まで、以下「移行期」という。)については、現日本海病院及び現酒田病院の施設を使用し、医療を提供していくこととなる。 

この移行期においても、統合再編効果を医療機能の向上と患者サービスに反映させるため、2病院における診療科の統合再編が必要であるが、実施に当たっては、医療の安全性の確保及び住民への周知等に配慮すること。 



2 高度専門医療の提供及び医療水準の向上 



(1)高度専門医療の充実 



診療体制の整備 



医療需要の質的・量的変化や新たな医療課題に適切に対応するため、患者動向や医療需要の変化に即して診療部門の充実及び見直しを行うことや、地域住民の医療ニーズに応じた専門外来の設置及び充実を進めるなど、体制の整備等を図ること。 



高度医療機器の計画的な更新・整備 



県・市病院機構に求められる高度専門医療等を提供できるよう、中期目標の期間における資金計画を策定し、計画的な医療機器の更新・整備を進めること。 





(2)優れたスタッフの確保 



優秀な医師の確保と医師の負担軽減 



高度専門医療等の水準を維持・向上させるため、優秀な医師の確保に努めるとともに、教育研修体制の充実を図りつつ、臨床研修医及びレジデント(専門分野の研修医をいう。)の受入れに努めること。また、医師の病院への定着を図るため、医師の負担軽減に努めること。 



看護師及び医療技術職の専門性の向上 



看護師の専門性の向上を図るとともに、患者に接する機会が最も多い看護職の意見を病院運営に反映する仕組みづくりに努めること。薬剤師、診療放射線技師、臨床検査技師等の技術職について、研修等を充実し、専 

門性の向上を図ること。 



事務職員の確保と資質向上 



プロパー職員の採用等による専門職化や研修の充実等による事務職員の資質向上を図ること。 





(3)医療サービスの効果的な提供 



地域連携の推進 



他の医療機関との役割分担と連携を強化し、患者に適した医療機関への紹介を進めつつ、紹介された患者の受入れに努めること。 



クリニカルパスの活用 



より短い期間で効果的な医療を提供し、患者負担の軽減にも寄与できるよう、クリニカルパスの作成及び適用を進め、質の高い医療を提供すること。 





(4)医療政策における役割の発揮 



災害時における協力 



災害時には、災害拠点病院として患者を受け入れるとともに、県の指示に基づき、又は自ら必要と認めたときは、DMAT等、医療スタッフを現地に派遣して医療救護活動を実施すること。 



政策医療の実施 



救急医療や災害医療のほか、高度専門医療や感染症医療等、政策医療の実施機関としての役割を果たすこと。 



(5)教育研修事業の充実 



庄内地域における医療水準の向上 



山形大学、東北大学、県立保健医療大学、県立病院などと連携し、地域の中核的な医療機関として、質の高い医療従事者を育成し、庄内地域における医療水準の向上に努めること。 



住民の意識の啓発 



地域住民を対象としたセミナー、広報などにより、住民の医療や健康に対する意識 

の啓発に努めること。 



 患者・住民サービスの一層の向上 



来院から診療、会計に至る全てのサービスについて、待ち時間の短縮等、患者の利便性の向上に努めること。 

また、サービスの向上に当たっては、患者・住民の意見を取り入れる仕組みづくりや、住民に病院の機能や実績を理解してもらうための取組みを積極的に行うこと。 

 法令等の遵守と情報公開の推進 



法令を遵守するとともに、高い倫理観をもち、患者が安心して医療を受けられるよう配慮すること。 



また、インフォームド・コンセントの一層の充実や、カルテ・レセプト等医療情報 

の適切な情報開示を実施し、患者の信頼向上に努めること。 





第3 業務運営の改善及び効率化に関する事項 



1 弾力的な運営体制の確立 



中期目標、中期計画及び年度計画に掲げる目標を達成するための制度、手法を導入し、効率的・効果的な業務運営体制を確立すること。 



2 診療体制、人員配置の弾力的運用 



医療需要の変化に迅速に対応し、医療従事者等の配置を弾力的に行うこと。 

また、必要に応じ常勤以外の雇用形態を含め多様な専門職の活用を図り、効率的な業務運営に努めること。 



3 収益の増 



県・市病院機構が有する様々な医療資源を医業収益の増に結びつけるため、その有効活用の方策を検討するとともに、病床利用率や医療機器の稼働率等については、中期計画において目標値を定めその達成を図ること。 



4 費用の節減 

人件費、材料費、経費について、中期計画において医業収益比率などの具体的な目標値を定め、その節減に努めること。 

特に人件費については、全国自治体病院の黒字病院の人件費率を参考に目標を定めること。 





第4 財務内容の改善に関する事項 



1 経常収支比率の均衡 



「第3 業務運営の改善及び効率化に関する事項」で定めた事項に配慮した中期計画及び年次計画を作成し、これに基づき病院を運営することにより、中期目標期間内に経常収支比率100%以上を達成すること。 



2 資金収支の均衡 



経営基盤を強化し、安定した経営を続けるため、目標期間内の各年度において資金 

収支の均衡を達成すること。 



第5 その他業務運営に関する重要事項 



1 優れた人材の配置と業務の評価 

地域住民の医療ニーズの変化に応え、高度な専門知識と技術に支えられた良質で安全な医療を提供するため、また、経営等専門的ノウハウを法人に蓄積するため、医師等の医療従事者や専門家など優れた人材を適切に配置すること。 

また、必要な人材の育成や能力開発、職員の業務を適切に評価し、かつ、透明性・公平性を確保することのできるシステムの確立を図ること。 

さらに、こうした評価を反映したインセンティブを提供することなどにより、職員のモチベーションの向上を図ること。 



2 職員の就労環境の整備 



専門的能力の十分な活用を図り、効果的な病院運営を行うため、職員の事情に応じ 

てその能力を発揮できるような柔軟な勤務形態を取入れるなど、職員の生活環境に配慮した病院運営を行うこと。 

また、日常業務の質の向上を図り、患者の安全を守るために必要な職員の就労環境を整備すること。 





(以下)最近の報道記事より 



やまがたニュース・解説 県立・市立統合の日本海総合病院(酒田) 経営改善と医師不足解消へ 

2008.04.06山形新聞   

  

酒田市の県立日本海、市立酒田両病院が統合した「日本海総合病院」が一日、誕生した。運営するのは、県と市が共同設立した地方独立行政法人「県・酒田市病院機構」(理事長・栗谷義樹院長)だ。県内の自治体病院は、約七割が赤字経営に陥り、深刻な医師不足の解決も見えない。酒田の統合再編は、この課題に県と市が打ち出した打開策といえる。地域の医療資源を集約するとともに、独法化により民間的な運営システムを取り入れた新病院の成否は、今後の県内の医療提供体制に影響を与えそうだ。 



新病院は、日本海総合病院(旧県立日本海)と酒田医療センター(旧市立酒田)から成り、機能を明確に分ける。今後、二〇一〇年度までの移行期間で、段階的に診療科の統合が進んでいく。日本海総合病院は庄内地域の中核病院として、急性期医療や三次救急、がんなどの高度専門医療を担う。一方、酒田医療センターは、内科とリハビリテーション科に限定。回復期医療を提供し、在宅復帰の支援や地域連携を進める。 



〇六年秋に始まった再編協議は、約一年半というスピードで、全国初の「県立と市立の統合と独法化」の形を見た。背景には、もはや限界に近い地域医療の危機がある。 



医師不足が進めば、勤務医の過重労働と、さらなる医師の流出という悪循環に陥る。県内の勤務医数は、人口十万人当たり一八七・九人(〇六年)で全国三十五位と、劇的な改善はまず見込めない。設置場所が近く、診療機能も重複していた酒田の両病院では、過酷な勤務にあえぐ現場のためにも、地域医療の質を保つ上でも、医師の集約が求められていた。 



また、医療費抑制を狙う国の医療制度改革の波は早い。国は、病院の再編や機能分担などにより、効率化を進めようとしており、この意図は、医師や看護師の人員配置、平均在院日数、高度医療に対する診療報酬の差別化などにも表れている。この波に素早く的確に対応できなければ、病院の経営改善は難しい。 



県と市が、職員が非公務員型の「一般地方独立行政法人」による運営を選択したのは、このためだ。地方公務員法の制約を受けないため、運営の自由度が高まる。予算執行や人事制度などに、院長の権限と責任が強まり、現場の実態や診療報酬改定などの変化に即応した形をとれるというメリットがある。 



このほど示された新病院の中期計画案(〇八-一一年度)では、経営改善策として、最終年度に▽病床利用率は日本海総合病院が91%以上、酒田医療センターが95%以上を目指す▽医業収益に対する人件費比率を全国の黒字自治体病院(五百床以上)の〇六年度平均(52・3%)以下にする-などが掲げられた。四年間の合計で、四億円の総収支黒字を見込む。 



旧病院の債務償還のほか、不採算部門とされる救急や災害対応などの政策医療については、県と市が責任を負い、運営費負担金(計百一億円)が交付されるものの、統合前の運営状況や予測の難しい医療改革の今後を考えると、目標達成は楽観できない。法人理事長と病院長を兼務する栗谷氏は、統合と独法化のメリットを生かすマネジメント手腕が問われるだろう。自治体病院の運営は厳しさを増し、公立病院の経営改革を促す国のガイドラインも示された。日本海総合病院がどのような成果と課題を示すのか、注目される。 



(報道部 烏美紀子)