公立病院、赤字圧縮に動く、民営化進め人件費削減 (グローカルView)

公立病院、赤字圧縮に動く、民営化進め人件費削減
(グローカルView)

 

2007/08/06, 日本経済新聞 朝刊
全国で自治体が運営する病院の三分の二が赤字に苦しむなか、経営形態を変えることで赤字体質からの脱却を目指す動きが広がってきた。約一千ある自治体病院のうち、ここ数年で約六十病院が民間への売却や指定管理者制度の導入などに踏み切っており、人件費の削減や効率化で一定の成果を上げている。(6日発行の「日経グローカル」に詳報)
 総務省は七月二十三日、公立病院の経営健全化策を検討する「公立病院改革懇談会」〔座長・長 隆(Osa Takashi)公認会計士〕を発足させた。民間の経営手法に注目し、病院事業再生の指針をまとめる。
 新しい民営化手法として脚光を浴びているのが指定管理者制度だ。施設の運営管理を一括して民間企業や特定非営利活動法人(NPO法人)などに委ねる仕組みで、2003年度に始まった。
 実質的な赤字が続き多額の税金を投入していた京都府旧大江町の国保新大江病院は、福知山市との合併に伴って指定管理者を取り入れた。医師や町民が組織した財団が受け皿となって05年に新体制で再出発した。
 経営は独立採算。いったん解雇した職員を再雇用することで、支出に占める人件費の割合を59.1%から54.7%へと削減した。病床の稼働率を高めて診療報酬を増やし、06年度は1,800万円の経常利益を確保した。
 財政破綻した北海道夕張市の旧市立総合病院も、四月に指定管理者制度を導入した。救急医療は隣接の栗山赤十字病院と連携し、医療機関としての機能を診療所に格下げ。四月に112人だった一日あたりの外来患者数が六月には119人に上向いた。
 福岡県は大規模な民営化に踏み切った。県立の四病院を民間に売却。残る一つも指定管理者に委託した。全体で約130億円の累積欠損を抱え、年間40億円近くの税金を投入するという経営状況だった。
 民営化に伴い約五百人の職員のうち231人が退職し、多くは経営を引き継いだ民間に移籍した。売却した病院の一つ、朝倉病院(福岡県朝倉市)は初年度に経常収支を四億八千万円改善し、赤字を八千万円まで縮めている。
 目標管理や業績主義を導入できる地方独立行政法人化を選択した自治体もある。大阪府の病院事業は05年度に四億二千万円の赤字だったが、大阪府立病院機構発足を機に人件費を削減。06年度は13億円の黒字となった。
 地方財政健全化法に基づいて08年度決算から自治体の財政指標とて「連結実質赤字比率」が採用される。赤字の病院事業を民営化や地方独立行政法人化すれば連結対象から外すことができるため、今後経営形態の見直しが加速しそうだ。
 設置や運営は現状のままで、首長が病院事業管理者に人事や予算編成などの権限を大幅に移譲できる「地方公営企業法の全部適用」にも関心が高まっている。
 05年に全部適用に切り替えた徳島県は、破綻寸前の市立病院を立て直した実績を持つ塩谷泰一氏を管理者に起用。県立三病院の連携を強化し、人材配置の見直しを進めた結果、06年度は十年ぶりの黒字になった。
 経営改善への期待感から、全部適用の導入は全自治体病院の約27%まで増えている。(産業地域研究所研究員
若杉敏也)
【表】自治体病院の経営形態変更の例      
形態  制度の狙い・内容  事  例  
地方独立行政法人  地方独立行政法人が具体的な目標を設けて、業務実績の評価、業績主義の人事管理、企業会計原則などを導入する  
  大阪府立病院機構(5病院)
  宮城県立こども病院    
  北松中央病院(長崎県江迎町)    
指定管理者制度  公的施設の管理を一括して民間事業者やNPOなどに委ねる。民間のノウハウを活用し、施設の管理経費を削減、利用者サービスの向上につなげる  
  国保新大江病院(京都府旧大江町)
  →医療法人財団新大江病院    
  横浜市立みなと赤十字病院    
  →日本赤十字社    
民間移譲  施設も含め、民間に経営を移譲する  
  旧石和町国保峡東病院(山梨県)
  →医療法人康麗会    
  旧佐賀関町国保病院(大分県)    
  →医療法人関愛会