医師は慢性的に過労状態で働いている・・・

『医師は慢性的に過労状態で働いている・・、本人の健康を損ねるだけでなく医療ミスの原因ともなる。医師個人に犠牲的な献身を期待するのでなく、医療制度全体の中で適正数や配置の見直しを行うのが筋・・・ 

 地方の医師不足については、地域医療の成功例もある事例に学び、財政面でも応援する仕組みがほしい。 
  

 国の予算全体にしめる医療や社会保障費をもっと増やすことが必要だ。国内総生産(GDP)比では、日本の医療費は先進国で最低水準にある。その点を考えれば、やり方はあるはずだ。 

 財政再建と両立を図りつつ、必要な社会保障費を確保する方策は・・・各政党に求めたい・・・』 
 



(報道記事1) 

社説 医師不足対策 医療全体を見直さねば 07年8月5日 
2007.08.05京都新聞   
  

医師不足が地域医療に深刻な影響をもたらしている。 

 国は緊急医師確保策などの対応に追われているが、対症療法的な対策では、国民の安心は守れない。あるべき国民医療について抜本的な見直しを政治が行うべきだ。 

 今日の医師不足問題は、医師の絶対数不足や都市部への偏在、特定の診療科でなり手が少ないなどの特徴を持つ。 

 経済協力開発機構(OECD)の「ヘルスデータ二〇〇七」によれば、加盟三十カ国の医師数は人口千人あたり平均で三・〇人。だが、日本は二・〇人(〇四年)で、加盟国中二十七位という。 

 国が医師養成の見通しを誤った結果が絶対数不足を招き、今日の諸問題の根っこにあることは確かだろう。 

 都市部への医師偏在は、新人医師が研修先を自由に選べるようになった臨床研修制度が始まった〇四年度から、さらにひどくなった。 

 地方の医療機関では、診療科目を減らさざるを得ない病院も続出した。診療報酬引き下げとのダブルパンチで、医療機関の倒産が急増している。 

 産婦人科のように宿直や訴訟が多い科が敬遠される点も特徴的だ。日本医労連の調べでは、産科と救急医療部門で働く勤務医の宿直回数は月平均五回を超えており、中でも産婦人科ではほぼ四人に一人が月八回以上の宿直をしていた。 

 医師が慢性的に過労状態で働いている実情は、本人の健康を損ねるだけでなく医療ミスの原因ともなる。医師個人に犠牲的な献身を期待するのでなく、医療制度全体の中で適正数や配置の見直しを行うのが筋だろう。 

 地方の医師不足については、地域医療の志に燃えた医師を育てるプログラムが必要だ。長野県の諏訪や佐久地方のように、地域医療の成功例もある。地域にとけこんで医師と患者の信頼関係を築き上げたこれらの例に学び、財政面でも応援する仕組みがほしい。 

 国は高齢化による医療費高騰を理由に国民医療費の伸び率を抑える施策を次々にとってきた。来年度からは、七十-七十四歳の高齢者の大半も、窓口負担が現行の一割から二割に跳ね上がるなど、患者負担も増す一方だ。 

 だが、国に見通しがあるかについては疑問が募る。現在すでに明らかとなっている事実を見れば、小手先の制度いじりでは国民の健康が守れないことは目に見えているのではないか。 

 国の予算全体にしめる医療や社会保障費をもっと増やすことが必要だ。国内総生産(GDP)比では、日本の医療費は先進国で最低水準にある。その点を考えれば、やり方はあるはずだ。 

 要は予算配分の優先順位をどうするかだろう。財政再建と両立を図りつつ、必要な社会保障費を確保する方策は-。それが政治に問われている。税制も含めた真に骨太な議論を、各政党に求めたい。 



(報道記事2) 

『話題』 崩壊寸前   
2007.08.03 高知新聞  
 「きれい事ではもう済まない。患者さんに医療現場の実態を知ってもらわなければ」 

 四万十市で先日、全国自治体病院協議会などの中国・四国地方会が開かれた。議論の中心となったのは勤務医の過重労働。出席した自治体病院長らからは悲痛な声が相次いだ。 

 医師不足により、特に自治体病院などの中核病院にしわ寄せが集中。医師が減る→個々の負担が増え、疲弊する→さらに医師が辞める→ますます疲弊する-という悪循環に陥っている。

 各病院から会に提出された意見集を開くと、月六-八回の宿・日直、通常勤務-当直-通常勤務と連続三十二時間以上の勤務…など、“過労死寸前”の実態を裏付ける言葉が並ぶ。 

 もう一つ指摘されたのが、救急の“コンビニ化”の問題。平日昼間の一般外来でも構わないほどの症状なのに、「二十四時間開いている病院」という感覚で救急に来る軽症患者の存在が過重労働に拍車を掛けている。 

 私自身、こんな光景を目にしたことがある。ある救急病院。子どもを抱きかかえた母親が受け付けを済ますなり、「早うしてよ!」と毒づいた。その病院は小児救急の当番日ではないにもかかわらず、である。 

 「犠牲的な精神で頑張ってきたのに限界。普通の人に戻りたい…」。ある自治体病院長は現場の思いを代弁する。肉体的疲労以上に、救急で専門以外の患者を診たり、患者から心ない言葉を浴びせられることによる精神的ストレスも大きいという。 

 「救急医療が一度崩壊しないと、分かってもらえないのでは?」。県内の医療関係者からはそんな悲観論すら漏れる。 

 患者を救うはずの医師が、逆に患者のせいで救われないという皮肉-。医療が崩壊して困るのは?