自治体病院が慢性的な赤字だからといって医療水準を下げて支出を抑えるのは本末転倒だ。住民サービスが低下しないよう、事業内容や地域の実情に十分配慮した基準作成が欠かせない

社説・・新指標は実態に配慮を=財政健全化法 

自治体病院が慢性的な赤字だからといって医療水準を下げて支出を抑えるのは本末転倒だ。住民サービスが低下しないよう、事業内容や地域の実情に十分配慮した基準作成が欠かせない 


2007.07.31
南日本新聞 
  自治体の財政状況は極めて深刻だ。税源の乏しい地方は特に厳しく、北海道夕張市が巨額の赤字を抱えて財政再建団体に転落した“夕張ショック”は今も尾を引いている。 

 夕張の教訓を生かし、財政再建を早期に促すため、先の国会で自治体財政健全化法が成立した。財政の健全化度を示す新たな四つの指標の導入と公表が制度の柱だ。「第二の夕張」に陥らないよう住民と議会の監視が一層重要になる。 

 指標の数値が一定の基準を超えると、自治体は「財政健全化団体」となり、財政健全化計画の作成が義務づけられる。さらに悪化すれば、地方債発行が制限される「財政再建団体」に移行する。 

 サッカーに例えるなら、イエローカード二枚で退場処分を受けるようなものだ。現行の財政再建団体制度では、いきなりレッドカードを突きつけられたが、早く手を打つことで破たん防止が期待される。財政運営に緊張感も生まれよう。 

 財政の健全化を示す指数はこれまで本体の普通会計が主な対象だった。新しく作成される指標のうち、「連結実質赤字比率」は赤字が多い下水道などの公営企業や国民健康保険など公営事業会計も対象になる。また、「将来負担比率」では土地開発公社や第三セクターの債務保証や損失補償額まで加えられる。 

 夕張市は巨額の一時借入金を特別会計間で操作するなどして最終的に普通会計の黒字を装っていた。新指標ではこの「隠れ借金」が明らかになる。自治体財政の透明性を高める意味で有効だ。 

 総務省は年内に四指標の基準をつくる方針だが、厳しければいいというものではない。下水道事業は初期段階で巨額の投資が必要で料金収入では賄いきれない。自治体病院が慢性的な赤字だからといって医療水準を下げて支出を抑えるのは本末転倒だ。住民サービスが低下しないよう、事業内容や地域の実情に十分配慮した基準作成が欠かせない。 

 地方自治体は職員削減や民間委託の推進などで予算を切り詰めている。だが財政状況は好転するどころか、交付税削減などで健全化には程遠いのが実態だ。 

 自治体の借金増加は国にも責任がある。バブル崩壊後の景気対策として公共事業を地方へ押しつけ、地方債発行の大幅緩和と償還時に地方交付税による補てんを約束した。国はその始末も必要だ。 

 もちろん、地方自治体も国への依存体質を改め、身の丈にあった財政規模での運営を心がけなければならない。