新市立小樽病院問題*起債許可へ正念場*5年間は緊縮必至*不良債務44億円*市財政余力なし

新市立小樽病院問題*起債許可へ正念場*5年間は緊縮必至*不良債務44億円*市財政余力なし 
2007.07.21北海道新聞      


 小樽市が築港地区に移転・新築を目指す新市立病院計画。今春の市長選で山田勝麿市長が三選し、市民からはゴーサインを得たが、市の懐具合が心配される。 

ただでさえ綱渡り状態が続いている市の財政の中、さらに総額二百億円とも言われる建設費用を調達、返済していけるのか。関連する問題を整理した。 

(中沢弘一) 

 新市立小樽病院が建設できるかどうかは、建設のための起債(借金)が国から認められるかどうかにかかっている。 

市本体の財政、市立病院の会計も赤字体質にあり、市の計画がどう判断されるか高いハードルが待ち受ける。今の財政状況と今後の見通しをまとめた。 

■不適切な処理 

 起債実現のために不可欠なのは、「不適切」と指摘された会計処理=グラフと別項記事参照=をやめた結果、表に出てきた不良債務四十四億円(二〇○六年度決算)の解消だ。 

 そのための期間は五年間。一般会計から病院事業会計への繰り出し、病院の経営改善を併用して行う。例えるなら、多額の借金を抱えた子供(病院事業会計)が、親(一般会計)からの仕送り(繰り出し)を受けながら、自らも生活費を切り詰めるなどして返済を行う-というものだ。 

 市の収支計画では、一般会計から繰り入れを増やすとともに、病院側の経営改善分も債務解消に回し、年間最大十一億八千万円を解消する-としている。 

入院、外来患者からの医業収益が減少傾向にある病院にとっては「相当に厳しい内容」(同病院事務局)。二年に一度の診療報酬の改定に伴う収支面への影響も心配される。 

 一般会計もようやく収支均衡を保っている時だけに、仮に病院の経営改善が計画を下回ったとしても、それを補うだけの余力は残されていない。 

■赤字を解消へ 

 市立病院は五年間の経費抑制策の柱として、人件費削減を掲げる。医師を除く職員全員の人件費が対象。 

○八-一一年度の四年間で、全体の2・9%を削減する。額は五億五千万円に上る。 

 また、○九年度からは、病院事業に地方公営企業法を「全部適用」し、赤字体質からの脱却を図る。 

全部適用は、事業の権限と責任を明確にした上で、経営を専門家が担うもので、予算編成や人事などにも責任者となる管理者が、直接かかわることができる。 

「すぐに効果を生むものではないが、職員の意識改革にも役立つ」と説明する。 

 このほか、収支計画を着実に実行していくため、六月から、医師や看護師、事務局職員でつくる経営改善部会を設置。全職員を対象に、経営改善につながる取り組みの意見を募り、三百十三件の提案が寄せられた。 

 病院事務局は、すぐに一定の財政効果が出せるもの、中長期的に取り組む必要があるものなどに提案を分類している。 

■市民に疑問も 

 「本当に起債は下りるの?」。市民の疑問の声は絶えない。 

 小樽市は起債に国の許可が必要な起債許可団体。現在、道と収支計画の内容、その妥当性をめぐる協議を進めている。 

「夕張問題に加え、赤字体質から抜け出せない自治体病院に対し、起債を認めるかどうかは非常に厳しくなっている」(同病院事務局)という。 

 道との協議で、市の収支計画に一定の了承が取り付けられた後は、国との協議に入る。 

起債のゴーサインが出るのは年明けの一、二月ごろ。 

用地取得の後には実施設計、着工とスケジュールが迫っており、同病院事務局は「一年たりとも先送りにはできない」とし、本年度中の起債開始に全力を尽くす。 

*見えにくい借金 赤字塩漬け元凶 

 自治体の会計には一般会計のほかに、病院など特別な事業だけを扱う会計があり、小樽市にも病院事業会計がある。もともとのお金の出どころは同じだが、使い道によって個別の財布を持つと考えるとわかりやすい。 

 大きな財布(一般会計)と個別の財布(事業会計)を持つことで、会計処理は複雑化し、不適切とされた会計処理を生む土壌にもなった。 

 市病院事業会計が抱える四十四億円の不良債務(実質赤字)は、一九九三-九九年度の七年間の赤字が蓄積されたものだ。 

病院の赤字分を一般会計から繰り出してゼロにすることもできるが、市は九三年度から、一般会計の繰り出しを減額し、その代わりとして貸し付けを行ってきた。 

 一般会計自体の収支が厳しくなり、病院会計に回す余裕がなくなってきたことに加え、返す必要がない繰り出しから、貸し付けにすることで、病院側に経営意識を高めてもらうことを狙った。 

 しかし、赤字額は減らなかった。市は九三年度以降、一般会計と病院会計の間の貸し付け、償還を繰り返し、その手法は昨年八月、道から「不適切な会計処理」として改善を求められた。 

 市は一般会計の「出納整理期間」という年度をまたぐお金のやりとりを利用した。 

出納整理期間は、会計年度が終了する三月末以降でも、その年度内に確定した債権、債務の整理ができる期間。例えば、実際の支払いは四月以降になる三月分の光熱費、三月中に実施した事業を四月に精算した場合の収入の処理などが行われる。 

 市が行った処理は-。《1》年度当初に一般会計から四十四億円を病院会計に貸し付ける《2》このままだと一般会計に四十四億円の赤字が出るので、その年度の出納整理期間に、病院会計から全額を一般会計に返す《3》一般会計の決算時に赤字は計上されない。 

 これらの会計操作により、実質的な赤字がどの程度あるのか見えにくくなった。 

*新市立病院開院に向けたスケジュール 

2006年12月 市議会で建設基本設計発注費8500万円を追加した補正予算案を可決 

  07年度中  築港地区で用地取得 

  08年 2月 基本設計を完成。新病院の規模、事業費など最終確定 

      3月 実施設計を発注 

     11月 実施設計を完成 

  09年 春  着工 

  11年 5月 建設工事完了 

  秋  開院