『全国病院事業管理者等協議会の武弘道会長・・・・・   看護師の約4分の1が看護師の副院長起用に「まだ無理がある」と反対している・・・。 しかし、病院職員の6割以上を占める看護師をまとめる能力があれば問題ない』

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『全国病院事業管理者等協議会の武弘道会長・・・・・   
看護師の約4分の1が看護師の副院長起用に「まだ無理がある」と反対している・・・。 
しかし、病院職員の6割以上を占める看護師をまとめる能力があれば問題ない』 


川崎市立川崎病院


追跡分析/医師中心の病院に風穴/副院長に看護師の起用相次ぐ 
2007.07.14 河北新報  


 病院のナンバー2である副院長に、看護師が就任するケースが増えている。実数こそまだ全国で168人と少ないが、今年5月の集計で、3年前と比べて3倍以上に急増した。患者に一番身近な存在ともいえる看護師の経営面への参加は、医師中心となりがちな病院運営に変化をもたらし、組織改善を促す効果が指摘されている。病院を変える看護師の力とはどのようなものか、背景を探った。 

◎院内隅々にまでネットワーク/縦割り解消に効果 

<最大派閥の強み> 

 2003年秋に放映された人気テレビドラマ「白い巨塔」の撮影現場となったことで、話題を呼んだ川崎市立川崎病院。翌04年4月にも同病院は、全国の看護職関係者から注目を集めた。当時、13の政令指定都市の自治体病院としては初めて、看護師が副院長の一人に就任したからだ。 

 ベッド数は730の地域の中核病院。職員数は約740人。そのうち看護師は520人強で約7割を占める“最大派閥”だ。新しく副院長に就任したのは、篠原弘子さん。看護部長も兼務する。篠原副院長は「看護師としての強みを生かして病院に貢献したい」と強調する。 

 病院には医師や薬剤師のほか、栄養士や診療報酬を計算する事務方など多くの専門職が集まっている。専門性の壁で縦割り組織になりがちだ。しかし、看護師は壁を越えて隅々にまで入り込んでいる。自治体病院でも院長の裁量が大きいのが現状だが、「組織の連携は看護師を通じると、やりやすい」と篠原副院長は分析する。 

<「患者のために」> 

 そうした強みが生かされた例がベッド稼働率のアップだった。ベッド管理の責任者は各病棟の看護師長だが、各病棟で必要なベッド数は毎日変わる。このため、病棟や診療科の壁を越えて空きベッドを利用できる全病院的な仕組みが必要。 

 ところが、うまくやらないと各診療科の患者があちらこちらに散らばり、医師は診察が煩雑になる。看護師にとっても同様で、空きベッドの弾力運用には抵抗は強かったという。 

 そうした抵抗を、「病院は患者のためにある」という認識で組織内の意思統一を図り、弾力運用を可能にしたのが、副院長ポストの力だった。病院全体のベッド稼働率は約85%から約10%上がり、入院待ち患者は減少。緊急入院にも対応しやすくなったという。 

<サービスも向上> 

 数字に表せない影響もある。常に医師より下に見られがちな看護師に副院長ポストを与えることにより、看護師の士気は上がった。一般に「初診の患者は医師の評判で病院を選ぶが、再診は看護師で決める」と言われるほどの影響力がある。サービス向上で外来患者も増えたという。 

 自治体病院は民間病院と違って、採算が取りにくい小児科や救命救急セン 

ターなども抱えるため、どこも経営は厳しい。川崎病院でも赤字が続いていたが、看護師副院長が誕生して2年目の05年度には、さまざまな経営改善策も進み、8年ぶりに黒字に転じた。 

 篠原副院長は「病院職員の中で、ある意味では、患者に一番近いのは看護師。人数も多く、患者にとっての問題をキャッチしやすい」と説明。 

 「副院長に看護師がいることで看護師一人一人が経営に関心を持つようになり、病院経営に跳ね返る。看護師が病院のトップと常に接している意味は大きい」と話す。 

◎ベッド稼働率、外来患者数上昇/経営面でもプラス 

<調整能力を評価> 

 一方、こうした看護師出身の副院長起用について、医療関係者はどうみているのか。 

 川崎病院トップの秋月哲史院長は「人選は適材適所が原則。薬剤師や放射線技師から副院長が出てもおかしくない」としながらも「看護師は複数の診療科を経験するし、院内の調整役としての能力が高く、副院長に適任」と評価する。 

 その上で、「医師は自己中心的に病院運営を考えがちだが、本来は患者中心であるべきだ。川崎病院では薬剤師など医師以外の職種のポストも格上げして、組織の活性化を図っている。看護師の副院長起用もその一環で、着実に実を結んでいる」と話した。 

 看護師の副院長起用で活性化した病院は少なくない。埼玉県のがんセンターや循環器・呼吸器病センターなど県立4病院でも、ベッド稼働率と外来患者数がともに上がり、赤字体質が黒字に転換した。 

 関係者は「収支改善で設備投資額が増加した。先端機器の導入が図られて医療レベルが上がり、患者も増えるという相乗効果を生んでいる」と言う。 

<院長にはなれず> 

 こうした看護師の副院長起用について、聖路加看護大(東京都中央区)の井部俊子学長は「日本の病院が抱えるそもそもの問題は、歴史的に医師がすべてを牛耳っていたということ。看護師副院長は、そこに風穴を開けることになり、その意味で評価していい」と話す。 

 その上で、井部学長は「日本では医療法で病院長は医師しかなれないが、医師としての能力とマネジメントの能力は別で、こんな法律上の制限があるのが不思議。マネジメント能力があれば看護師が院長になってもいいはず」と言う。 

 日本で看護師が副院長に就任したのは、1987年の東札幌病院(札幌市)が最初といわれる。2番目が聖路加国際病院(東京都中央区)で、井部学長はそこで看護部長と副院長を兼務した経験を持つ。 

 「医師は病気を診るが、看護師は病気だけではなく患者の職業や家族など社会的背景も把握し、人としての全体像でとらえようとする。こうした価値観こそ、患者中心の医療には重要」と、看護師が副院長を務める意味を強調する。<今後の浸透期待> 

 だが、ドラマ「白い巨塔」にも描かれていたように、病院内での医師の権限は依然として強く、看護師を見下しがちな傾向は強い。それに安住しようとする医師もいて、看護師の権限拡大を煙たがる雰囲気も一部にあるという。井部学長も副院長時代に、あからさまな嫌がらせを受けたことがあるという。 

 もっとも、こうした医師と看護師の関係は日本だけの問題ではなく、看護師の副院長起用が普通の米国にもある。ジャーナリストのスザンヌ・ゴードン氏は著作の中で「大半の看護師が患者の前で医師から侮辱された経験を持つ」などと記している。ただ、日本と比べれば、米国では看護師の発言力は強い。背景には看護師が専門職として、時には医師と対立して権利を勝ち取ってきた歴史がある。 

 日本の病院事業者でつくる全国病院事業管理者等協議会の武弘道会長は「看護師の約4分の1が看護師の副院長起用に『まだ無理がある』と反対している。しかし、病院職員の6割以上を占める看護師をまとめる能力があれば問題な 

い」と徐々に浸透することを期待する。 

 病院組織特有の事務局の壁を指摘する声もある。各種統計によると、患者のニーズに敏感な民間病院や自治体病院では看護師副院長は増えているものの、出身官庁幹部の天下り先などの問題もある国立病院機構などや厚生連病院などでは増えていない。 

 小児科医として40年近い勤務医経験を持つ武会長は語る。「病院は看護師に支えられている。立派な看護師の仕事ぶりを見てきた経験からすると、看護師を経営幹部に起用しようとしない病院は、取り残されていくのではないか」