PFI 事業契約は無効だった 高知医療ピーエフアイ(SPC)社と病院事業組合が結んだ契約では、新たな費用の発生は、組合側か同社側かどちらに責任があるかによって負担者を決めることになっていた。しかし、この取り決めは事実上、当初から「無効」だったことになる・・・



『PFI 事業契約は無効だった 
 高知医療ピーエフアイ(SPC)社と病院事業組合が結んだ契約では、新たな費用の発生は、組合側か同社側かどちらに責任があるかによって負担者を決めることになっていた。しかし、この取り決めは事実上、当初から「無効」だったことになる・・・経営形態の抜本的見直しが迫られるのではないか』 


医療センター汚職  松田被告に懲役1年求刑 高知地検  贈賄資金 JV負担   【解説】 
2007.12.14 
高知新聞   
 高知医療センター(高知市池)を舞台にした汚職事件で、前院長の瀬戸山元一被告(63)=京都市左京区=に家具家電のわいろを渡した贈賄罪に問われている元オリックス不動産社員、松田卓穂被告(68)=広島市安佐南区=の初公判が十三日、高知地裁で開かれた。同被告は全面的に認め、検察側は懲役一年を求刑、審理を終えた。判決は来年一月十七日。(医療PFI汚職取材班) 

 検察側は、病院建設工事を発注した県市病院組合(現・企業団)が十四年十二月の着工後、設計変更を瀬戸山被告に実質的に「一任」していた経緯を説明。その上で、工事経費の膨らむ設計変更の要望が瀬戸山被告から次々と出されていたと指摘した。 

 県市側の予算が増えないまま経費だけが膨らむことに苦慮した受注側の松田被告らは、経費削減に向けて瀬戸山被告と折衝。玄関の屋根ガラスの仕様を安価なものに代えたり、野外トイレの設置をやめることを同被告に依頼し、これを承諾してもらったことが「便宜」に当たるとした。 

 家具家電の資金については、病院本館工事の納入業者だった大塚家具と三越に依頼し、院内のレストラン設備の請求に紛れ込ませて伝票処理。本館建設工事を請け負った共同企業体(=JV、代表・竹中工務店)が最終的に費用負担した構図を明らかにした。 

 同被告は設計変更協議について「瀬戸山先生なしでは一切、前に進まない状態。先生のワンマン組合と言っても過言ではなかった」と証言。わいろの供与は、元同不動産社員の矢倉詔喬被告(64)=神戸市東灘区=から相談され、最初は「先生は『官』だからまずいんじゃないか」と断ったが、結局、「(わいろを贈らなければ)工事に支障を来すと思った」などと当時の状況を語った。 

 また、供与後、瀬戸山被告から十万円だけ受け取り、現場の「慰労会」資金に充てたと述べた。 

 検察側は「不正な会計処理を主導、犯行に不可欠な役割を果たした」と論告。弁護側は「明らかな便宜を受けたという意思はなく、反省している」と執行猶予付き判決を求めた。 

 起訴事実によると、松田被告は矢倉被告と共謀し、十六年十二月-十七年一月、瀬戸山被告から同センター建設工事の設計変更で経費縮減の便宜を図ってもらった謝礼の趣旨で、計二十一点、二百五十万円相当の家具家電を渡した。 

【解説】 県市の「一任」も問題 

 元オリックス不動産社員の松田卓穂被告は十三日の初公判で、前院長の瀬戸山元一被告が次々と出す設計変更の要望がいかに重荷だったか強調した。一方の県市病院組合(現在の企業団)は同被告に変更業務を実質的に任せきった状態になっていたとされ、県市がどこまで現場の業務をチェックしていたか、あらためて問われよう。 

 検察側によると、組合の最高意思決定機関だった幹部会議は着工直後の十四年十二月、設計変更の権限を瀬戸山被告に一任することを決め、さらに新たな費用が発生しても組合は負担しない方針を示したという。 

 もともと、受注元の高知医療ピーエフアイ(SPC)社と組合が結んだ契約では、新たな費用の発生は、組合側か同社側かどちらに責任があるかによって負担者を決めることになっていた。しかし、この取り決めは事実上、当初から「無効」だったことになる。その上、権限の多くが瀬戸山被告に集中していたとすれば、民間側が同被告に何とか取り入ろうとしたのは、ある面、自然な構図だったかもしれない。 

 民間企業の柔軟な発想を取り入れようと、今回の統合病院建設では当初からかなりの設計変更が見込まれていた。 

 「瀬戸山(被告)を通して要望は出すが、金は出さない」。当時の県市の態度や工事へのかかわり度合いについては、今後の病院企業団議会でも追及されるべき問題だろう。 

  * 前院長に責任転嫁も 「機嫌取りが仕事に」 

 十三日開かれた元オリックス不動産社員、松田卓穂被告(68)の初公判。グレーのジャケットに身を包んだ松田被告は、逮捕後の苦悩をうかがわせるように小さな背中を揺らし、「犯罪と分かっていた」「申し訳ないことをした」と涙声にむせびながら頭を下げた。その一方で「責任は感じるが、もし(贈賄を)断っていればしゅん工できたか疑問だ」とも語り、「建築屋の端くれ」としての自負と、瀬戸山元一被告への“責任転嫁”ともとれる姿勢もにじませた。 

 「わいろの話が出てからは、(瀬戸山被告が入る宿舎を)『S邸』と言うようになった」 

 松田被告は、同じく贈賄罪で起訴されている矢倉詔喬被告(64)とのやりとりで、瀬戸山被告のことを「エス」と呼び、贈賄行為を外部に気付かれないよう注意を払っていたと話した。 

 いったんは断っていた矢倉被告からのわいろの相談を了承したことに話がおよぶと、「(瀬戸山被告の)機嫌を取り、工事の打ち合わせが(スムーズに)できるようにするのが私の仕事だった」「なぜ断れなかったのかと情けない気持ち」と後悔の念も口にした。 

 検察側は、大塚家具の担当者や三越に勤める松田被告の長男に対し、松田被告が「瀬戸山の宿舎の家具を構える」「(高知医療センター)十一階のレストランに(家具を)入れるような処理をしてほしい。表に出せるものではないんだ」などと指示していたことも明らかにした。

 犯行の動機については「(個人的利得を得ようという気持ちは)一切ない」と強い調子で語った松田被告だが、検察官から家族についての質問が出るとハンカチで涙をぬぐうしぐさも。

 逮捕前の取材に対し、贈賄行為を事件当時のピーエフアイ社役員に「報告していた」と話していた松田被告だったが、法廷では「(上司から贈賄行為の了承は)取っていません」と、“上層部の関与”を打ち消した。(医療PFI汚職取材班) 

  《ズーム》 

  ◆高知医療センター 

 県立中央病院と高知市民病院を統合し17年3月に開院。民間の資金とノウハウを公共事業に導入する「PFI方式」を全国で初めて病院に導入した。県市病院組合はオリックスを代表とする特定目的会社(SPC、11社で構成)「高知医療ピーエフアイ」と30年間、約2130億円で契約。SPCは病院建設と医療以外のサービス提供などを担う。贈賄側被告が在籍したオリックス不動産はSPC構成企業。病院本館の建設は竹中工務店を代表者とする共同企業体が受注していた。PFI方式は、行政側にとっては長期一括発注によるコスト削減が期待され、民間側は長期、安定的に事業利益を確保できることが利点とされる。