北海道夕張市の財政破綻(はたん)が財政運営を見直すきっかけになつた・・



『北海道夕張市の財政破綻(はたん)が財政運営を見直すきっかけになつた・・ 財政健全化法 破綻を未然に防ぐ手だてを講じた同法を評価する首長は半数に上り、否定的な1割を大きく上回った』 


赤字減らし、加速へ 地方自治体財政・全国首長アンケート 
2007.12.12朝日新聞   
  
朝日新聞社が実施した全国首長アンケートでは、地方自治体財政健全化法の適用を控え、「第2の夕張になるな」と歳出カット、歳入増に取り組む自治体の姿が浮き彫りになった。従来の普通会計だけでなく、健全化法で新たにチェック対象となる下水道、病院などの公営事業で、特に赤字減らしの動きが加速しそうだ。住民にとっては負担増、サービス低下を意味する。借金を膨らませる原因となった公共事業を奨励してきた国への批判も聞かれた。 


 ●健全化法 「連結」での判断、支持 

 健全化法の評価は「する」46%、「しない」10%だった。人口別でみると、1万人未満の自治体は33%と16%、15万人以上は58%と2%で、小規模になるほど評価は厳しかった。 

 評価の理由では、健全化法の最大の特徴である連結ベースでの財政チェックを挙げた首長が最も多い。注目すべきは、同法が4指標の住民への開示、議会への報告を義務づけたことへの評価が約半数に上り、2番目に多かった点だ。 


 ●病院事業 7割が赤字、見直し拍車 

 1日夜、能登半島の付け根にある富山県氷見市で、市民病院の公設民営化の住民説明会が開かれた。「累積赤字は31億円を超えています」。堂故茂市長は厳しい病院財政を説明し、「地域医療を支えるためです」と理解を求めた。 

 61年設立の同病院(368床)の財政悪化は年功序列型の賃金体系や国の診療報酬マイナス改定などに加え、ここ数年の医師や看護師の減少が拍車をかけた。毎年、一般会計から5億~7億円を繰り入れてきたが、地方交付税の減額もあって限界が近づいていた。 

 市まちづくり推進本部は「健全化法は財政危機を黄色信号で知らせる点が大切だ。氷見市の場合、病院事業の見直しが切迫した課題だ」という。来春からの経営は金沢医科大学に指定管理者として任せる方針だ。 

 総務省によると、自治体病院1060(05年)のうち約7割が赤字で、累積赤字額は1兆7820億円に上る。健全化法をきっかけに病院事業の見直しが加速するのは必至だ。 


 ◆歳出見直し、96%が検討 

 健全化法の4指標が適用されるのは予算編成中の08年度の決算からだ。そこで08年度以降の予算編成で検討している取り組みを聞いたところ、歳出見直し、徴税強化、資産売却の三つが半数を超えた。次いでローンの借り換え、基金による借金返済と続く。 

 合併した自治体だけに発行が認められた「合併特例債」など起債の見直しを挙げた自治体が全体で1割を超えた。合併自治体だけを分母にすればさらに割合は上がる。借金の大半が交付税で賄われる特例債さえ使えない台所事情がのぞく。 


 ◆監査の充実化、2割が前向き 

 同法が目指すのは財政のチェック強化だ。その役割を担う監査委員制度の充実強化を考えているかを聞いたところ、「考えている」18%、「考えていない」21%、「未定」60%だった。 

 充実強化の具体策を3項目から複数回答で選んでもらったところ、「研修などの充実」73%▽「監査事務局の充実」26%▽「監査委員の人選の見直し」16%--の順に多かった。 


 ○脱「夕張」は情報開示から 編集委員・神田誠司 

 <解説> 北海道夕張市の財政破綻(はたん)が財政運営を見直すきっかけになりましたか--。 

 そんな質問に全国の首長の約4割が「なった」と答えた。その夕張の反省をもとにつくられたのが、地方自治体財政健全化法だ。 

 夕張では、チェックの目が届かない事業会計などに巨額の赤字を隠していた。同法では連結決算の手法で赤字を洗い出す。いきなり財政破綻に転落しないように、イエローカードにあたる「早期健全化団体」も設けた。 

 破綻を未然に防ぐ手だてを講じた同法を評価する首長は半数に上り、否定的な1割を大きく上回った。同法の適用を機に、歳出削減や民間委託、歳入増の取り組みが一層加速しそうだ。ただ、地方財政の困窮は、自治体の放漫経営だけが原因ではない。 

 内需拡大や景気浮揚のために地方に借金を奨励して公共事業へと誘導した揚げ句、国は地方交付税に大なたを振るった。「連結」で浮き彫りになる病院や下水道会計の赤字も、医師不足を招き、やみくもに下水道を奨励した国の存在抜きにありえない。 

 それなのに地方だけに責めを負わせるのか--。自主財源の乏しい小規模自治体を中心に「評価しない」が多いのも当然だろう。補助金や交付税で地方をコントロールする手法をやめ、財源を地方に渡さなければ自立した地方財政は望めない。次は国が変わる番だ。 

 アンケート結果で注目したいのは、半数近くの首長が「(同法をきっかけに)住民や議会への説明責任が高まり、情報の開示・共有が進む」と回答した点だ。夕張では住民が知らないうちに借金が巨額に膨らんで破綻した。その反省から同法では健全度を示す財政指標の数値の住民への情報開示を義務づけた。 

 自治体が破綻すれば、そのツケは住民に回ってくる。そんな現実を突きつけたのも夕張だった。「我が町の財政チェック」に乗り出す住民たちが各地で増えている。 

 「ポスト夕張」の財政運営は徹底した情報の開示から始め、自治を育むしかない。その道筋をアンケート結果は指し示している。 


 ■自治体健全化法の評価 

 どちらともいえない 44% 

 評価する      46 

 評価しない     10 


<「評価する」の内訳> 

普通会計以外も含めた「連結」で判断 62%
住民らへの説明責任が高まり、情報開示が進む 49
財政規律が高まる  29
「再生」前に「健全化」を設定  27
中長期計画策定への指標となる 17
監査機能が充実する

 

<「評価しない」の内訳>
一律の指標で評価している 36%
条件不利な地域性を考慮せず 28
公共サービスにしわ寄せがいく 20
一時的な元利償還のピークだけに着目 18
国の関与を強めている  15
放置してきた問題を唐突に処理 12