総務省指ガイドラインが地域に必要な医療の在り方を考えるきっかけになるのはいい。しかし、金科玉条とすべきではない。

『総務省指ガイドラインが地域に必要な医療の在り方を考えるきっかけになるのはいい。しかし、金科玉条とすべきではない。』 


社説 公立病院改革 医師不足解消が先では 07年11月27日 
2007.11.27京都新聞   
  
総務省の有識者懇談会が公立病院の経営効率化に向けた指針案をまとめた。 

 病床利用率の低い病院を設置する自治体に対し、診療所への格下げや病床数削減を求める内容となっている。 

 だが、病床利用率低下の背景に医師不足があるにもかかわらず、肝心の医師確保策はなく説得力に乏しい。 

 指針案が一律に適用されれば、医療過疎地域の医療がさらに縮小する心配がある。効率化は必要だが、「地域に必要な医療は何か」という基本的な視点が見えてこない。総務省は病院の設置自治体に対し、二〇〇八年度中の改革プラン作りを求めるが、地域特性を考慮できるよう弾力的な運用が望まれる。 

 総務省が指針案をまとめた背景には、公立病院の深刻な経営悪化がある。 

 自治体の財政悪化で一般会計からの繰入金は縮小し、医療費抑制策や高齢化する医師らの給与費も経営を圧迫する。 

 全国九百七十三の公立病院のうち、〇六年度決算で七割以上が赤字だ。赤字総額は二千二百三十億円に上る。 

 指針案では公立病院が三年以内に経営効率化を進め、一般会計からの繰入金を含め黒字化するよう促す。統廃合や民間への譲渡など経営形態の見直しを伴う場合は五年以内をめどに進めるよう、自治体に改革プラン作りを要請する。 

 その際、病床利用率や経常収支比率などの数値目標の設定を義務づけた。 

 特に病床利用率が三年連続で70%未満の病院については診療所(二十床未満)への転換や病床数の削減も迫る。 

 〇六年度決算に基づく総務省の試算では、百四十六の公立病院が70%を割り込んでいる。京滋でも舞鶴市民病院、亀岡市立病院、京丹後市立弥栄病院、水口市民病院の四病院が該当する。 

 問題なのは「70%未満」の中身だ。 

 医療過疎地域では住民のニーズがあっても、医師不足で診療体制の縮小を迫られた末の「休床」も多いという。病院間競争の結果、住民の足が遠のき、病床利用率が低下した都市部の公立病院とは事情が異なる。 

 にもかかわらず、指針案には医師確保策が見当たらない。医療過疎地域の病院で病床数が削減されれば、さらに医師は減り、診療科廃止にもつながる。生死にかかわる救急医療も大きく後退する。 

 医師が地方でやりがいを持って働ける環境整備こそ、国は急ぐべきだ。でなければ、医師確保に努めてきた自治体独自の取り組みにも水を差しかねない。 

 今後の改革プラン作りでは、設置自治体だけでなく、コーディネート役としての都道府県の手腕も問われる。 

 診療科によっては、市町村単位だけではなく、広域的な視点から各病院の機能分担を考える場面も出てこよう。 

 今回の指針案が地域に必要な医療の在り方を考えるきっかけになるのはいい。しかし、金科玉条とすべきではない。