公立病院経営効率化へ指針案 自治体に再編促す 基幹施設に機能集約(解説)



公立病院経営効率化へ指針案 自治体に再編促す 基幹施設に機能集約(解説)
 
2007.11.21読売新聞   
  

◆医師の負担軽減図る 

 総務省の有識者懇談会が、公立病院の経営効率化を目指し、改革のガイドライン(指針)案をまとめた。深刻化する医師不足が経営悪化に拍車をかけ、地域医療が崩壊しかねないとの危機感が背景にある。(政治部 赤津良太) 

 指針案の狙いは、公立病院を開設した地方自治体に、病院経営の抜本的な見直しを迫ることだ。総務省によると、2006年度は全国968の公立病院のうち、約4分の3の721病院が経常赤字で、赤字額も計2229億円に上っている。 

 良質な医療サービスを継続して住民に提供するには、限りある予算やマンパワーの有効活用が欠かせない。そこで指針案は、改革の視点として〈1〉経営効率化〈2〉再編・ネットワーク化〈3〉経営形態の見直し--の3点を挙げ、自治体に「公立病院改革プラン」を2008年度中に策定するよう求めている。 

 具体的には、医業収支比率(医療収益と人件費・材料費などの支出の割合)、経常収支比率(医療外を含む収益と支出の割合)などの指標を示し、数値目標を設定して3年以内に黒字化を達成する道筋を明らかにする必要がある。 

 注目されるのは、病床利用率が「3年連続で70%未満」の病院に対し、病床数の削減や診療所(20床未満)への転換を求めていることだ。数値目標を形骸(けいがい)化させないため、あえて見直し内容にまで踏み込んだのが特徴だ。 

 この基準に06年度時点で該当する公立病院は、総務省の調べで、全国968病院の15%にあたる146病院に上る。懇談会座長で公認会計士の長隆氏は、病床利用率を重視する理由について「70%を下回る病院は、ほとんどが赤字になっている」と指摘する。 

 赤字体質からの脱却が難しい病院は、規模縮小か再編・ネットワーク化が迫られる。その場合、自治体は5年以内をめどに実施計画を策定しなければならないが、指針案は再編・ネットワーク化の参考事例を示している(図参照)。 

 共通するのは、経営統合などで中核となる基幹病院に主な機能を集約し、既存の病院は規模を縮小して存続することだ。代わりに基幹病院は、他の病院・診療所に医師を派遣するなど、ネットワークの拠点機能を担うことになる。 

 長氏は「『ハコ(病院)があっても医者がいない』では意味がない。再編・ネットワーク化で経営が安定化し、医師の継続的な派遣が可能になれば、今よりも良い医療サービスが受けられる」とメリットを強調する。 

 こうした指針案の内容について、公立病院側も「医師の過重な負担を少なくし、これまで以上の医療を地域に提供するためには、再編・ネットワーク化しかない」(小山田恵・全国自治体病院協議会会長)と冷静に受け止める。 

 だが、公立病院は元来、山間地や離島などの辺地医療に代表されるように、採算が見込めず民間が進出しない部門を担うために設立されてきた。地方交付税による財政措置もあるが、自治体の一般会計からの繰り入れで何とか経営を維持しているのが実態だ。 

 広島国際大学の谷田一久准教授(病院経営論)は「指針案は公立病院の赤字を解消したいだけだ。肝心のネットワーク化も、どういう患者をどこで診るのか、患者をだれがどう運ぶのかなど、具体的な内容がない」と批判する。 

 とはいえ、何もしないで許される状況にはない。特に自治体首長に課せられた責任は重い。08年度決算から適用される地方公共団体財政健全化法は、自治体が起債などを行うためにクリアすべき要素に病院会計を加えたため、公立病院の経営立て直しが喫緊の課題に浮上したからだ。 

 住民や議会の監視の目が欠かせないとの考えから、外部監査の義務付けやマスコミへの積極的な情報公開なども盛り込んだ今回の指針案は、地域医療のあり方を変える「引き金」となるか--。総務省は、年内に指針を策定し、各自治体に通知