琉球新報・・新垣毅記者の報道姿勢を評価したい!公立病院の現場をほとんど見ず重大な誤解を与えたとの報道批判を受けてその後夜間勤務に付き合うなどで公正な報道を続けていることは救われる


『琉球新報 新垣毅記者の報道姿勢を,評価したい 

 公立病院の現場をほとんど見ず 重大な誤解を与えたとの報道批判を受けて,その後 夜間勤務に付き合うなどで,公正な報道を続けていることは救われる・・・』  

<あすへの道標・ニュースの現場から 第60回新聞週間>3/医療報道/「現場知らない」と批判 
2007.10.17 琉球新報  
  
医療を担当してまだ一カ月足らずの四月二十日。日本政策投資銀行が全国の自治体病院で働く医師の給与や患者数などを調べた都道府県別結果の記事が反響を呼んだ。一面トップ「高額給与で医師確保限界」との見出しで沖縄の医師の給与は高い順に全国四位、看護師給与は一位だが、過重労働のために医師が確保できない-との内容だ。 

 しかし、この記事に県立病院の医師らから強い抗議がきた。ほかの都道府県の自治体病院よりも高い給与との指摘にある程度の反発は予想していたが、抗議の度合いは予想をはるかに超えた。数々の電話、メール、ファクス。署名記事だったため、多くの医師が見るメールリングリストで名指しで「記者として能力がない」と非難された。 

 医師らの指摘にはうなずける点もあった。医師一人当たりに対する患者数は研修医を含むが、給与の平均の算出では給与の低い研修医が含まれていないため「患者数は少ないのに給与は高い」とのイメージを読者に与えた-というのだ。 

 また「高額給与であっても過重労働がひどく、医師確保が限界にきている」との意味合いでつけたつもりの見出しが「高額給与であるがために医師確保が限界にきている」と読めるとの指摘だ。 

 後に調査データや見出しを検証すると、指摘はもっともだと思った。県立病院に足を運び、抗議をしてきた医師に釈明もした。その際、医師らが最も語気を強めて批判していたのは「(記者は)医師が働く現場を知らない」という声だった。 

 「ならば現場をとことん取材しよう」。デスクのアドバイスもあり、救急医療の現場に昼夜張り付き、ルポ取材をすることを決めた。その現場には午前零時を過ぎても緊張を失わず、救急車が到着するたびに走り回って奮闘する医師や看護師の姿があった。 

 その際、若い研修医が話し掛けてきた。「現場を見れば、調査データの問題点や意味はすぐ分かるでしょう。たくさん批判されたでしょうが、めげずにこれからも現場に来てください」。この言葉に励まされた。 

 五月六日付朝刊で県立病院の医師の当直が全国の二倍に上り、その大半がそのまま日勤している実態を一面トップで報じ、社会面で救急医療の現場ルポと、四月二十日付朝刊の記事中の調査データに問題があったとの記事を掲載した。その後、医療現場の矛盾を訴えてくる医師や「会って話したい」と声を掛ける医療関係者が増えた。四月の記事がきっかけで今なお、現場の医療従事者から多くを学んでいる。 

 医師や看護師の過重労働は患者の命にもかかわる。県立病院は赤字が膨らみ経営の問題も抱え、取材は一筋縄ではいかない。粘り強く現場に足を運びたい。(新垣毅)