地方に医師を惹きつけるため地域で医師を長期的に育成する視点が必要!

『地方に医師を惹(ひ)きつけるため、地域で医師を長期的に育成する視点が必要!』 


傾聴に値する 伊藤恒敏教授のマグネット(人を惹きつける)ホスピタル・・・公立病院改革の旗印・・選択と集中は科学的調査に基いている』 

以下 
伊藤常敏 東北大学地域医療教育開発センター長 ・東北大医学部教授地域医療システム学(宮城県)寄付講座副主任の論考です 


 我々の調査では、医師不足が深刻なのは、病床100~300床の中規模病院が多い。人口20万人程度の医師不足の医療圏に、中規模病院を再編して、500床前後の教育環境が整った病院を整備することが必要だ。この規模なら、若手医師が技術を磨くための症例経験が十分に積める。我々は、こうした病院を「マグネット(人を惹きつける)ホスピタル」と呼び、実現を模索している。 

 大学、マグネットホスピタルを核とした病院群、行政が連携して、包括的な医師育成の仕組みを地域に構築することが大切だ。医師不足地域を生じさせないために育成と配置をバランスよく考えなくてはいけない。 


こうした医師不足は、実は新制度が始まる前に起きていた。北海道、東北を中心に全国の病院で広がった「医師名義貸し事件」である。医療法で定められた医師数を確保していない病院に医師の名義だけを貸与していた。 

 こうした深刻な医師不足の実態を国が放置していたことが、今日の医療崩壊拡大の原因の一つであると言えよう。 

 しかし、政府は1997年に医学部の定員削減を閣議決定したことを盾に医師不足について真正面から議論しようとしない。昨年7月に厚生労働省の検討会がまとめた報告書では、「医師不足は地域偏在が原因。2022年には医師の需給バランスが均衡する」と強調した。これでは、適正な医師数を考えるための議論は生まれない。 

 経済協力開発機構(OECD)によれば、加盟国の人口10万人あたりの医師数の平均は約300人だが、日本の医師数は約200人。東京を含めた政令指定都市でさえ255人である。 

 我々の研究チームが厚労省の統計をもとに計算したところ、約25万人の医師しかいないのに、全国の医療機関では約29万人の医師が働いていた。つまり、差の4万人は、非常勤や掛け持ちで賄われている。90年以降この状態が続いている。医師が適正な労働時間である週40時間を順守しようとすると約10万人も不足する。 

 また、日米の人口当たりの病床数には実質的な差はないが、国内総生産(GDP)当たりの医療費は米国15%、日本は8%である。しかも、医療費が少ないのに、平均余命など日本の医療の実績は最高レベルだ。 

 これは、医師の過酷な勤務に負っているところが大きい。財政事情の面から、医療費削減の必要性が叫ばれているが、今以上に抑制すれば、医療の質を下げることにつながる。 

 医療崩壊に歯止めをかけるには、まず医師数をOECDの平均まで増やすことだろう。来年4月から始まる、青森、岩手などの医師不足10県の大学医学部定員増や、5月に発表された政府・与党の医師不足対策・医師定員増は、付け焼き刃的で、合理性や一貫性はない。