総務省は29日の公立病院改革懇談会(長隆座長)に対し、病床利用率が70%未満の自治体病院に再編などを促す改革プランのガイドラインの素案を示し、大筋で了承された。



2007.10.31 日刊薬業   
 総務省は29日の公立病院改革懇談会(長隆座長)に対し、病床利用率が70%未満の自治体病院に再編などを促す改革プランのガイドラインの素案を示し、大筋で了承された。改革プランには、病床利用率など少なくとも3点の数値目標を盛り込むことが必要とし、経営赤字に陥っている自治体病院は最短で3年後の黒字転換を目指す。 

 総務省は同日、「公立病院改革ガイドライン」の素案を提示した。素案は、赤字病院を抱える地方自治体に対し、不採算部門への一般会計からの繰り入れを前提に黒字転換するまでの具体的な取り組みを記した改革プランを2008年度中に作成することを要請。繰り入れが単なる赤字補てんにならないよう明確な基準の設定も要求している。 

 改革プランの期間は院内業務の見直しなど経営の効率化については3年間で、ほかの自治体病院との再編・ネットワーク化などを伴う場合には5年間とする。 

 経営効率化のプランには数値目標を入れ込む必要があり、<1>経常収支比率<2>医業収益に占める職員給与比率<3>病床利用率--の3点は必須にする。 

 その上で共通する数値目標として病床利用率70%以上を設定。過去3年連続で下回った場合には、病床数の削減や診療所への「スリム化」を求め、病床過剰の2次医療圏では複数の自治体病院による再編・ネットワーク化を促している。総務省によると、06年度単年度で70%を割っているのは885病院中、310病院と全体の35%を占める。 

  
公立病院改革、自治体に数値目標を要求 達成困難なら見直し 総務省指針案 
2007.10.30朝日新聞   
 総務省は29日、有識者による公立病院改革懇談会を開き、自治体に公立病院の経営改善を促す改革ガイドライン(指針)案を決めた。自治体が08年度中に策定する改革プランで経常収支比率▽職員給与費比率▽病床利用率の3指標の数値目標を必ず設定するよう求め、病床利用率がおおむね過去3年間連続して70%未満の病院には病床数の削減や診療所への転換など抜本的な見直しを促した。年内にも指針にして自治体に通知する。 
指針に強制力はないものの、プラン策定から2年間たっても数値目標の達成が著しく難しい場合、経営形態の見直しなどプランの抜本的な見直しと改定を求めている。 
 同省によると、病床利用率70%未満の病院は06年度、全国で310病院。全体に占める割合は05年度27%から35%となった。病院事業は06年度に約8割が赤字で、経常損失は05年度から約450億円増えて約2100億円に達しており、多くの自治体で病院経営の見直しが迫られそうだ。 

 一方、指針案は、不採算病院の病床数を減らす代わりに近隣の基幹病院から医師を派遣するなど公立病院の再編成・ネットワーク化を進めることも明記。総務省は再編に必要な財政支援をする一方、交付税など既存の財政支援は見直す方向で、地域医療網の再編が加速する可能性がある。(津川章久) 


 ○「診療所にはならぬ」 入院患者減、原因は医師不足 

 ●北海道 

 公立病院の数でも累積赤字額でも、全国の1割近くを占める北海道(102病院、05年度で約1800億円)。道立を除く94病院について03~05年度の病床利用率を見ると、4分の1強の25病院が、総務省の指針で診療所への転換などを求める「3年間連続で70%未満」に該当する。 

 「ワースト1」は、札幌市から車で2時間半ほど、人口約3300人の黒松内町にある町立国保病院。40ある病床の利用率は03~05年度が20%台、06年度は19・7%だった。だが、スタッフは「診療所に転換するつもりはない」と言う。 

 救急病院に指定されているが、診療所になれば救急対応ができなくなる。最も近い別の救急病院まで、雪のない時期でも車で最低1時間はかかる。「町民の命を守るには病院のままでなければならない」(スタッフ)というわけだ。 

 財政面の影響も大きい。診療所になれば、06年度に約8千万円だった交付税が10分の1以下になる。人件費を削減しても差額に及ばない。 

 病院と町の幹部は29日もこの問題を協議したが、「診療所になれなんて無責任だ」という思いが強まるばかりだ。 

 都市部の大病院も苦しい。札幌市の隣の市立小樽病院(309床)の病床利用率もここ数年、70%を割り込む。もう一つの市立病院と合わせると05年度末で約66億円の累積赤字を抱えている。 

 しかし、病床が減れば市外の病院に入院せざるを得ない患者も出る。母親が入院している50代の主婦は「パートをしながら治療費を補い、病院で付き添いもできるのは地元の病院だから。ほかの地域に入院したら交通費もかかり、家庭が崩れる」と心配する。(田中晃) 


 ●山梨 

 東京都に隣接する山梨県には、12公立病院(県立病院を除く)があるが、06年度の平均病床利用率は、平均70・1%。70%未満の病院は06年度で6病院ある。 

 甲府盆地の南西にある市川三郷町(人口1万8千人)。JR駅前にある町立病院(100床)は06年度の利用率が53・7%。入院患者数は5年間で3分の2以下に減った。 

 一気に70%に落ち込んだのは04年。原因は医師不足だ。小児科は休診になり、内科医は4人から3人に減った。05年には、それまで入院の4分の1以上を占めていた整形外科で、地元山梨大が医師2人を引き揚げた。高齢化とともに骨折治療のニーズは高いが、週2回の非常勤医師では入院に十分な対応ができない。町関係者は「何とか医師を確保して病院を維持したい」と苦しい胸の内を明かす。(吉田晋) 


 ◆身近な病院、調べてみては(くらしの視点) 

 今回のガイドラインは、今後、住民が身近な病院でどのような医療が受けられるのかを左右する。入院もできる病院が診療所に縮小されたり、身売りされたりするかもしれない。 

 その兆候は「病床利用率」や「経常収支比率」といった経営指標から読み取れる。全国982の公立病院ごとに「平成17年度地方公営企業年鑑」に掲載され、総務省のホームページから誰でも閲覧できるものだ。 

 誰でも身近に県立、市立、町立の病院があるはず。税金を投入して公的に医療サービスを維持するべきか否か。地域で活発に議論するために、まず自らで経営実態をつかむ必要がある。


 ■自治体による病院事業の経営状況 

 (総務省調べ。カッコ内は経常損失額の合計) 

          赤字事業      黒字事業 

 06年度 78.9%(2104億円) 21.1% 

 05年度 68.7 (1649億円) 31.1 

 04年度 66.2 (1575億円) 33.8 

 03年度 60.8 (1287億円) 39.2